アクセンチュア(NYSE: ACN)の最新調査によると、アジア・パシフィック地域の金融テクノロジー(フィンテック)投資は、2015年1月から9月の9か月間で約35億ドルに達し、2014年の約8.8億ドルから急伸しています。また、日本でのフィンテック投資も同期間において既に約4400万ドルに達しており、2014年度の5500万ドルに迫る勢いとなっています。
分野別にみると、決済業務(40%)が最も高い比率を占め、次に融資業務(24%)と続いており、これまで銀行が独占していた領域での投資が大半を占めています。
<アジア・パシフィック地域、および日本におけるフィンテック分野への投資案件数および投資件数のグラフは添付をご覧ください>
本調査「Fintech Investment in Asia-Pacific set to at least quadruple in 2015(英語)」は、香港のサイバーポート社(Cyberport)で開催された第2回アジア・パシフィック先進金融テクノロジーラボ「投資家の日(Investor Day)」で発表されました。
アクセンチュア株式会社 執行役員 金融サービス本部 統括本部長の中野 将志は次のように述べています。「現在、銀行ビジネスへのフィンテック活用に関するご相談を数多くいただいています。2015年は、世界中で多くの金融機関がフィンテックのもつ潜在力の取り込みに動き始めたと言えます。」
本調査によると、2015年10月1日時点の投資件数は122件に達し、2014年の117件と対比して順当な伸びを見せています。さらに、投資金額を見てみると、中国で相次いだ国内外向けの大型案件により、飛躍的な増加となっています。注目すべき案件としては、Alibaba Group Holdingsと関連会社Ant Financial Services Groupによるインドのモバイル決済プラットフォームであるPaytmへの出資や、P2P(Peer to Peer)およびB to Cのオルタナティブファイナンス・投資プラットフォームを開発するPing An Insurance Group傘下のベンチャー企業Lufaxによる資金調達の成功が挙げられます。
日本においても、国内とアジア向けにP2P決済プラットフォームを構築するエクスチェンジコーポレーション(ExCo)による資金調達など、決済サービス分野でのフィンテック投資が見られます。
さらに、アクセンチュアが次世代トレンドとして注目するブロックチェーンやクラウド分野についても、大きな関心が寄せられています。例えば、東京に拠点を置くクラウド会計・給与計算サービス「Freee」(旧CFO株式会社)は、自動オンライン会計ソフト(銀行口座とクレジットカードを自動同期)の開発に向けた資金調達に成功しました。また、日本を拠点とするビットコイン取引所「bitFlyer」は今年、シードおよびシリーズAラウンドによる資金調達を行いました。
アクセンチュアのシニア・マネジング・ディレクターを務め、アジア・パシフィック金融サービスを率いるベアト・モネラット(Beat Monnerat)は次のように述べています。「昨年は、既存の金融機関以外の大手企業が中国におけるフィンテック決済分野に投資を行ってきました。投資案件の大型化は、中国を始めとしたアジア・パシフィック地域の金融機関が使い勝手と利便性の高いデジタルソリューションを提供しなければ、個人向けサービスのみならず、法人向けサービスへもフィンテック企業が侵食してくることへの警笛と見る必要があります。」
銀行が注目すべき「ブロックチェーン」、「クラウド」、「サイバーセキュリティー」分野
近年、金融機関は、フィンテックを業務効率化や、当局規制の変化および新たな通貨への対応に活用しようとしています。アクセンチュアは、分散型記帳により仮想通貨や暗号化された金融資産取引を支える技術であるブロックチェーンが、スタートアップ、銀行、投資家が注目する分野になると予想しています。ブロックチェーンは単体の技術として、銀行、クレジットカード会社やクリアリングハウスが協力することで安全かつ迅速な清算処理の実現、カウンターパーティリスク削減や取引所要期間短縮による資本の最適化を可能とします。
フィンテックにおける別の注目分野としては、金融機関におけるクラウド活用が挙げられます。クラウド導入の機運が高まるにつれ、銀行はパブリッククラウドに格納可能なデータとプライベートクラウドに格納すべきデータの選別を進めています。銀行は機密性の高い顧客データをプライベートクラウドに格納することで規制当局の要件を満たすと同時に、パブリッククラウドが実現する効率性、柔軟性、オンデマンド機能、コスト削減等のメリットを享受することが可能です。この状況はフィンテック領域のスタートアップ企業にとって、クラウド関連の新しいサービスを提供する好機となっています。
さらに近年、大きく報道されている大規模な情報漏えいの影響もあり、来年はサイバーセキュリティーに対する投資が大幅に増加するとアクセンチュアは予測しています。
2年目を迎えたアジア・パシフィック先進金融テクノロジーラボは、アクセンチュアとニューヨーク市のパートナーシップ基金(Partnership Fund for New York City)により2010年に設立した同様のプログラムをモデルにしています。2010年以降、アクセンチュアは2012年にロンドン先進金融テクノロジーラボ、2014年にはダブリンにてアジア・パシフィック先進金融テクノロジーラボを設立しています。これまでニューヨーク先進金融テクノロジーラボのプログラムに参加した31の企業は、合計1億7500万ドルの資金調達に成功し、そのうちの4社は買収されています(Standard TreasuryとBillGuardは2015年に買収)。ロンドン先進金融テクノロジーラボ設立後の2年間で、プログラムに参加した21の企業は3500万ドル以上の新たな資金調達、銀行との間に約50件ものビジネス契約、そして平均で170%の売上増を達成しました。また、アジア・パシフィック先進金融テクノロジーラボのプログラムに参加した企業も、既に2650万ドル以上の資金調達に成功しています。
2015年 11月25日
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