関西財界セミナー開幕　独自性磨く施策展開を

「一極集中の是正と関西が持つ強みの発揮」をテーマとした関西財界セミナーは５日開幕した。約５８０人が参加し、分科会討議に入った。焦点は安倍政権が打ち出す「地方創生」の課題と、健康・医療産業の可能性、観光戦略−の三つ。一極集中の裏側で地方が衰退し、少子化や人口減が進む状況を憂慮。リニア中央新幹線など交通インフラの強化とともに、医療・健康産業など独自性を磨く施策展開を求めた。「関西から地方創生のモデルを」との声が相次いだ。

　【地方創生】脱・東京一極集中が鍵

　政権の重要課題である地方創生。「その成否を握るのは、東京一極集中の是正を実現できるかだ」と加藤貞男・関西経済同友会代表幹事が声を上げた。

　論議になったのが交通インフラの強化。藤井聡・京大大学院教授が新幹線の整備格差の状況を説明した上で「リニア中央新幹線の大阪までの全線同時開業こそが西日本を救う」と強調した。

　その一方で、東京を意識し過ぎず、関西の魅力を生かす方策が必要という意見も。

　廣瀬茂夫・日本総合研究所関西経済研究センター所長は「地方創生の戦略を進める際、経済界がもっと関与すべき」とした上で「観光だけではなく、科学技術やライフサイエンスの発展に力を入れるべき」と呼び掛けた。

　池田辰雄・兵庫工業会会長（神戸製鋼所顧問）は「国の考える施策は実態とかけ離れている」と批判した上で、「地方の産官学が議論する場を設けるべきだ」と強調した。

　馬場（ばんば）宏之・神戸経済同友会代表幹事（ダンロップスポーツ会長）も「東京に本社機能を置く会社や団体が多いが、企業、金融、教育の拠点を地元に置き、地域を引っ張る態勢を整えなければならない」と話した。

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　【健康・医療産業】基礎研究の成果、産業に

　健康・医療産業が集積する関西の強みをどう生かすのか。会場では、医療産業都市を進める神戸からの参加者が積極的に発言し、論議をリードした。

　井村裕夫・先端医療振興財団理事長（京大名誉教授）は「今後の医療は病気にならないようにする先制医療や、かかりやすい病気を遺伝子レベルで発見する精密医療に向かう」と指摘。「関西は医学の基礎研究に強い。企業と協力しながら応用につなげ、世界に発信したい」とした。

　牧村実・川崎重工業常務は「医療とロボット、情報通信技術など異業種の連携で、新たな需要を生み出せる」と可能性を強調。

　これに対し、家次恒・神戸商工会議所副会頭（シスメックス会長兼社長）は「医療にはリスクが伴うことが日本では受け入れられにくい。（社会の考え方が）一歩進まないと次の段階に行けない」と、機器開発の難しさに言及した。

　食から医療へのアプローチも。岩田弘三・同副会頭（ロック・フィールド会長）は「病気にならない食事の提供など、食品業界も大きな役割を担えるはず」と意欲を示した。

　一方、医療機器の承認審査を担う独立行政法人「医薬品医療機器総合機構（ＰＭＤＡ、東京）」が大阪と神戸に初の地方拠点を設けたことについて更家悠介・サラヤ社長は「審査権限の委譲など中身の充実を求めるべき」と話した。

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　【観光戦略】官民で「関西観光局」を

　観光戦略をテーマにした分科会では、福島伸一・新関西国際空港会社会長が「関西は狭い範囲に観光資源が集中し、スポーツの大きな催しも控えるが、都市ごとに取り組みがばらばら」と指摘。「官民一体で『関西観光局（仮称）』を設置し、広域戦略を進めるべき」との持論を示した。

　具体的には、広域周遊ルートや交通パスの開発▽公衆無線ＬＡＮサービス設置拡大▽多言語対応−などを掲げて賛同を得た。一方、「観光局の活動資金や人材の確保が困難」との声も聞かれた。

　成松郁廣・神戸経済同友会代表幹事（川崎重工業執行役員）は「関西で協議を深めると同時に、地元の兵庫県内でも日本海側を含む広い県域に好影響が及ぶような手だてを考えたい」と述べた。

2015年 2月6日
神戸新聞NEXT

日本総合研究所
三井住友フィナンシャルグループのシンクタンク。シンクタンク業務および、三井住友フィナンシャルグループ各社向けにシステムコンサルティング、システム開発を展開。シンクタンク、コンサルティング、システムインテグレーションという3つ事業を軸に、各事業部門がクライアントのニーズに合わせ横断的に連携しチームを編成することにより、適切でスピーディーな付加価値を創出している。

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