「医師としての経験をもっと広い視野で活かしたい」「医療制度や公衆衛生の分野に貢献したい」といった志向の方に注目されているのが医系技官というキャリアです。
医系技官は、国や自治体の公衆衛生・医療政策に携わる専門職であり、臨床とは異なる形で社会全体の健康を支える重要な役割を担います。
本記事では、医系技官の仕事内容や採用動向、転職のメリットなどを解説いたします。

医系技官は、厚生労働省や地方自治体などの公的機関で働く医師資格を持つ専門職です。
主に公衆衛生や医療行政の分野で、政策の立案・実施などに携わっています。医系技官の仕事は、病院や診療所で患者を診る臨床医とは異なり、国や地域の医療体制の整備、感染症対策、医薬品・医療機器の規制など医療全体に影響を与える仕事です。
例えば厚生労働省の医系技官は、国全体の医療政策を担当し、保険制度の運営や感染症対策の立案などに関与します。
また、国立感染症研究所や国立保健医療科学院などの研究機関でも活躍することがあります。一方、地方自治体の医系技官は、地域の保健行政を担い、地域住民の健康増進や医療提供体制の整備を担当します。

医系技官の採用は、主に厚生労働省や地方自治体を中心に行われています。
特に厚生労働省の医系技官は、毎年国家公務員採用試験（総合職・技術系）を経て採用されるケースが多いです。加えて、医療政策の専門知識を持つ医師のニーズが高まっているため、既に臨床経験のある医師が中途採用で医系技官に転職するケースも増えています。
採用動向としては、感染症対策や医療制度改革の必要性が高まっており、採用ニーズも非常に高まっています。その一例として新型コロナウイルス感染症の流行を受けて、感染症対策の専門家として医系技官の役割が注目されるようになりました。これに伴い、行政機関では医療政策や公衆衛生に精通した医師の採用を積極的に進めています。

医系技官の業務は多岐にわたりますが、大きく分けて「政策立案」「研究・調査」「行政指導」の3つの分野に分類されます。
1. 政策立案
厚生労働省の医系技官は、国の医療政策や制度の策定に関与します。例えば、医療費の適正化、医療安全対策、医薬品や医療機器の承認・規制などが含まれます。また、感染症対策の計画を策定し、必要に応じて医療機関や自治体と連携して実行する役割も担います。

2. 研究・調査
研究機関に所属する医系技官は、医療・公衆衛生分野の調査・研究を行います。例えば、新たな感染症の発生リスクを評価し、その対策を科学的根拠に基づいて提言する業務が挙げられます。

3. 行政指導
地方自治体の医系技官は、地域の保健医療施策を担当します。具体的には、病院や診療所の指導・監督、地域医療計画の策定、健康増進施策の立案などがあります。また、住民向けの健康教育や啓発活動を行い、地域全体の健康を向上させる役割も果たします。