【プライスウォーターハウスクーパース】ベンチャー投資、アジアが北米に迫る、17年は２．２倍に急伸

【シリコンバレー＝佐藤浩実】世界のベンチャー企業への投資額が2017年に前年比49％増の1644億ドル（約18兆円）となり、２年ぶりに過去最高を更新した。北米地域が17％の伸びにとどまる一方で、中国やインドなどアジア地域が2.2倍に急増。北米に偏っていたベンチャー投資がアジアへと広がっていることが鮮明になった。調達額が数十億ドルにのぼる大型案件も目立った。

　調査はベンチャー企業情報の米ＣＢインサイツとプライスウォーターハウスクーパース（ＰｗＣ）が共同で実施。世界のベンチャーキャピタルや事業会社による未上場の新興企業への投資をまとめた。

　アジアのベンチャー投資額は17年に初めて700億ドルを上回り、北米の745億ドルに迫った。16年の段階では北米とアジアで２倍近い差があったが、シリコンバレーのベンチャー投資が一服するなかでアジア企業への投資の伸びが際立った。

　直近の17年10〜12月期で最大の投資案件は中国ライドシェア（相乗り）大手の滴滴出行と、中国通販サイトの美団点評による各40億ドルの資金調達だった。滴滴は１月初めにブラジルの同業を買収すると発表。調達資金を使って海外事業の拡大を進めている。

　欧州のベンチャー投資額は40％増の176億ドルだった。一方、17年の世界のベンチャー投資の件数は１万1042件で、前年比11％増にとどまった。投資額と比べて伸び率が低いのは、１社あたりの資金調達額が大規模化していることを示している。

　ＣＢインサイツのアナンド・サンワル最高経営責任者（ＣＥＯ）はこの点を「ソフトバンク・エフェクトだ」と説明する。ソフトバンクグループや、同社がサウジアラビアなどと立ち上げた「10兆円ファンド」による大型投資が世界的に目立っているためだ。滴滴出行や米国のシェアオフィス大手ウィーワークなどが代表例といえる。ウィーワークは調達資金を使い、昨年11月に米交流支援サイトのミートアップを買収。貸しスペースの用途を広げようとしている。

　デジタルの世界だけで完結するソフトウエアではなく、ＩＴ（情報技術）と自動車のようなモノを組み合わせた「ＩｏＴ」のサービスが増えていることも調達額の大型化に影響している。

　17年は人工知能（ＡＩ）を扱うベンチャー企業への投資が増えたのも特徴だった。米国ではＡＩ関連の投資が前年比で28％伸び、初めて50億ドルに到達した。10〜12月期はＡＩを活用して保険を提供するレモネード（ニューヨーク）やデータ解析のアップテイクテクノロジーズ（シカゴ）などが資金を調達した。18年もＩｏＴやＡＩ関連の企業が世界のベンチャー投資をけん引する見通しだ。

2018年 1月16日
日本経済新聞

PwCコンサルティング
世界151カ国に163000人のスタッフを擁する世界最大級のプロフェッショナルサービスファーム。、PwCアドバイザリー株式会社が、プライスウォーターハウスクーパース コンサルタント株式会社（旧ベリングポイント）、プライスウォーターハウスクーパースHRS株式会社を経営統合し、社名を「プライスウォーターハウスクーパース株式会社」に変更した。M&A/フィナンシャルアドバイザリー、監査、税務を含め、戦略から業務、ITまでトータルで一貫したコンサルティングサービスを提供している。

PwCコンサルティングについて

コンサルティング業界の最新ニュースをお伝えします。最先端の業界で何がどう動いているのかをWatchすることで、広くビジネス界全体の今後の動きを展望することができるはずです。