「グリーンIT」はバズワード(流行語)か戦略か

「グリーンIT」という言葉が流行する前から、自分たちがやっている省エネ戦略を「グリーン」と銘打っていたIT部門も多いが、だからといってグリーンITのための広範な戦略を持っているとは限らない。

 米Forrester Researchが2007年10月、従業員1000人以上の企業のIT管理者130人を対象に実施した調査では、グリーンIT遂行のための総合計画を持っていたのは15%のみだった。

 しかし総合計画を持っていないIT管理者も、アクションプランと管理戦略を正当化する提案や事業上の動機を見つけるのに苦労はなさそうだ。

 「素晴らしいのは会社にとって正しいことができるだけでなく、環境にとって正しいことができるという点だ。多くの場合、これは非常に収まりがいい」とForresterのアナリスト、クリストファー・マインズ氏は言う。

 IT部門は、コンピュータの電源を切ったりデータセンターのサーバを統合するといった典型的な省エネ・経費削減手段から手を付ければいい。しかし真のグリーンIT戦略は、ソフトウェアの省エネ設計、コンピュータ機器のリサイクル、原料効率のための新しい創造的プラン立案といった、典型的な手段以外の分野にまで及ぶ。

 例えば、セントルイスに拠点を置く農業関連企業の米MonsantoはPCとサーバをリサイクルしているが、輸送・燃料経費と環境への影響を抑える目的でさらなる措置を取ろうとしている。以前はリサイクルのためにデスクトップPCをシカゴに輸送していたが、今では地元セントルイスのリサイクルサービスを検討している。

●基本理念の浸透

 会社のCEOや上層部からの命令や指示はないと、MonsantoのITインフラ業務責任者リサ・クレイマー氏は話す。農業を主力事業とするMonsantoは環境保護を社是としており、こうした取り組みはその一環となる。従業員はあらゆる局面で「さらなる効率化をどう図るかについて考える」ことを奨励される。

 重要なトップダウンの経営戦略としてMonsantoは、自主プログラムのChicago Climate Exchangeに参加している。同プログラムに基づき、2010年までに米国の主力事業で生じる二酸化炭素(CO2)の直接排出量を2000年のレベルより6%引き下げるか、カーボンオフセット買い取りを行う。

 もう1つの大きな決断として、ミズーリ州クリーブクールの拠点では地元の電力会社Amerenとの提携を通じ、全エネルギー消費量の10%を風力などの再生可能資源から購入することを約束している。

 同じ流れでMonsantoは最近、省エネデータセンターを建設し、米グリーンビルディング審議会にLEED(Leadership in Energy and Environmental Design、エネルギーと環境に配慮したデザインにおけるリーダーシップ)認定を申請している。IT部門はサーバ仮想化と統合でも大きな実績を上げ、300台以上あったサーバを16の物理ホストに減らした。

 「これはMonsantoの理念の一部にすぎない。つまり全従業員に浸透していることだ」とクレイマー氏は言う。

●リーダーを探せ

 音頭取りをするリーダーの手でグリーンIT事業を主導してもらうという、古くからのアプローチが必要な会社もあるだろう。Info-Tech Research Groupの調査コンサルタント、アーロン・ヘイ氏は、経営上層部──できればCEO、CFO、COO──をグリーン指向の支援者として取り込むことが、多くのIT部門にとって欠かせないと指摘する。

 「CIOも味方に付ける必要はあるが、ほかにも取締役の誰かに支援者あるいはリーダーになってもらう必要がある。ITは大きな変化をもたらせるのだから」とヘイ氏。ただし「ほかの部局の協力なしにやることはできない」

 同氏によると、IT部門は全体構想、戦略、具体的目標を盛り込んだアクションプランを策定する必要がある。エンドユーザー、事業部の管理職、取締役を含む組織の全レベルの代表者を巻き込んだ分野横断的取り組みの陣頭指揮をIT指導部が執ることを、ヘイ氏は勧めている。

 ヘイ氏によると、このグループの業務では以下の質問に答えることに力を入れなければならない。自分たちは何をしているのか。なぜそれをやっているのか。今後1〜3年でどの程度の変化が起きるのか。

 グリーンITの責任者は、電力、建物、不動産を管理している施設担当者と朝食会を持つといいとForresterのマインズ氏は助言する。「こうした組織がいかに閉鎖的で分断されているかにはいつも驚く。IT担当者は電気料金がどれくらいになるかなど考えたこともないのだ」

 マインズ氏は、会計担当者との昼食会も提案する。IT部門はデータセンターの統合、サーバ仮想化、装置入れ替えなどで設備投資が必要なこともあるからだ。こうしたプロジェクトの恩恵を受けるのは設備部門になるため、会計部門は設備部門とIT部門の財務表を突き合わせ、資金が行くべき所に渡っているかを確認する助けになってくれるかもしれない。

 マインズ氏は言う。「これはプロジェクトを遂行する上でのまっとうな障壁だ。会計部門は部門間の壁を破り、この種のことを遂行しようとしている関係者の動機と恩恵を共有するための仲介役とならなければならない」

 大規模なIT部門ではどこかの時点でITインフラの正式アセスメントを実施し、消費電力やデータセンターの発熱量といった分野をチェックした方がいいかもしれないとマインズ氏は助言する。推定経費は2万5000〜5万ドル程度になるという。

 「わたしの経験では、ほとんどのIT部門は必ずしもこれについて十分なノウハウを持っているとはいえない」

●全社的変化を主導

 しかしマインズ氏によると、IT部門は会社の他部門のグリーン化実現のための重要なノウハウを持っている。交通費を減らして経費とCO2排出量の両面で貢献できるビデオ会議や在宅勤務といった全社的プロジェクト推進の中心的な役割を果たすことができるのだ。

 CO2排出に関して政府の規制や義務、命令を受けることが予想される企業は、向こう数年にわたりIT部門が頼りになるかもしれない。欧州では既に、大量のCO2を排出する企業には割当量が定められていると、米Gartnerのアナリスト、サイモン・ミンゲイ氏は指摘する。割当量を超えた企業はカーボンクレジットを購入しなければならず、割当量に満たなければ販売することができる。

 「北米でもそうなるという兆候は何もない。しかし長期的に見ると、そうなることが想定できるというのは極めて理にかなった妥当な見方だ。従って、これはリスク要因として計画に盛り込んでおく必要がある」とミンゲイ氏。

 一方でエネルギー効率に関して言えば、環境上のメリットは「純粋な偶然」(ミンゲイ氏)にすぎないとしても、データセンターとITインフラにおいて簡単に取り組める所から経費を削減する機会は大いにある。

 「今後ますますこの重要性は増すだろう。IT部門がインフラのエネルギー効率促進への貢献を求められるようなことにはまだならないだろうが、会社を助けることは自らのエネルギー効率を高めることにもなる」とミンゲイ氏は言う。

 保険会社の米Highmarkは6年前に新しいデータセンターの計画に着手したとき、セキュリティの観点からLEED認定を取得することが望ましいと判断した。「次いで『グリーンの観点にも目を向けるべきではないか』ということになった」とトム・テイバーCIOは振り返る。もっとも当時はグリーンという言葉は使っていなかったが。

 Highmarkは電力消費の効率化を図るために単純な一般常識に従い、最終的にLEED認定を申請することに決めた。

 データセンターの「輝かしい実績」が、全社的なグリーン戦略を促すきっかけになったかどうかは分からないとテイバー氏は言うが、同社のCEOは協力的で積極的に話し合いを持ってくれ、施設担当者も「固い信念を持っていた」という。

 IT部門は改造的観点さえ持って、ほかのグリーン戦略にも目を向け続けたとテイバー氏。同社は既に仮想化によってサーバ台数が削減できるようになっていた。メリットについての情報と導入の選択肢をネットで提供することにより、紙の使用が減るだけでなく、より速く、コストを掛けずに情報をユーザーに伝達できると同氏は話す。

 「社員がやろうと思うことのみが企業にとって意味がある、というのがわたしの信念だ。それによって促進されるのが現実だ」

2008年 6月24日
TechTarget

ガートナージャパン
業界最大規模のICTアドバイザリ企業。顧客には数々の大手企業や政府機関が名を連ねており、IT系企業や投資組合なども多い。リサーチ(Gartner Research)、エグゼクティブプログラム(Gartner Executive Programs)、コンサルティング(Gartner Consulting)、イベント(Gartner Events)から構成されている。

ガートナージャパンについて

コンサルティング業界の最新ニュースをお伝えします。最先端の業界で何がどう動いているのかをWatchすることで、広くビジネス界全体の今後の動きを展望することができるはずです。

ニュース検索はこちらから 

ご登録はこちらから

PRIVATE SEMINAR

まずはキャリア相談会から

コンサルタントへの転職・キャリア相談会を電話・オンラインで随時開催中

コンサル業界にご興味をお持ちの方へ

などコンサル転職における疑問点や不安な点についてお答えいたします。

もちろん現在の各社の採用状況や、転職タイミングのご相談など今後のキャリアについてのご相談もお受けしております。

ご登録・ご相談はこちらから

キャリア相談会 プライベート個別相談会開催中 キャリア相談会 コンサル転職に関する疑問・不安はプロに聞くのが一番早い!ざっくばらんに話せる個別相談会を随時実施しています。今すぐの転職をお考えでない方も歓迎していますのでお気軽にご相談ください。

書籍出版記念 久留須シニア・パートナー特別キャリア相談会 個別相談会開催中! 書籍出版記念 久留須シニア・パートナー特別キャリア相談会 久留須シニア・パートナーの書籍出版を記念してコンサル業界のこと、キャリアのこと、をお答えする特別キャリア相談会を開催します!

ベイン・アンド・カンパニー 1日選考会 22024年6月1日(土) 締切:2024年5月9日(木) ベイン・アンド・カンパニー 1日選考会 同社の中途採用選考は原則として選考会のみで行っております。世界的な戦略コンサルティングファームであるベイン・アンド・カンパニーにて一日選考会が開催されます。

ドリームインキュベータ(DI) キャリアセミナー 2024年5月21日(火)19:00~20:30 締切:2024年5月12日(日) ドリームインキュベータ(DI) キャリアセミナー ケース面接対策も実施されます!日系戦略コンサルファームのドリームインキュベータにてキャリアセミナーが開催されます。執行役員(パートナー)、シニアマネジャー、ビジネスプロデューサーが参加しますのでドリームインキュベータの理解がかなり深まると思います。


			A.T.カーニー プラクティス オンラインキャリアセミナー 2024年5月7日 (火) 19:30-21:30 締切:2024年4月29日(月・祝) A.T.カーニー プラクティス オンラインキャリアセミナー 外資戦略コンサルティングファームのA.T.カーニーにてキャリアセミナーが開催されます。日本代表 関灘による会社紹介およびサービス別のプラクティスチームごとに分かれて、参加者からもインタラクティブに質疑・相談頂けるカジュアルなセッションを予定しています。

EYストラテジー・アンド・コンサルティング ITコンサルタント キャリアセミナー 2024年4月25日(木)19:00~20:00 締切:2024年4月23日(火) EYストラテジー・アンド・コンサルティング ITコンサルタント キャリアセミナー TC-Technology Transformationではテクノロジー全領域に亘り、戦略策定から導入支援に至るまでの包括的なサービスを提供し、クライアントの競争力強化を支援。ITプロフェッショナルとしてプロジェクトに参画する。

PwCアドバイザリー SDGs/ESGポジション キャリアセミナー 2024年5月14日(火)19:00-20:00 締切:2024年5月9日(木) PwCアドバイザリー SDGs/ESGポジション キャリアセミナー M&A×ESGという稀有なキャリアに興味がある方必見!応募意思不問となっていますのでお気軽にご参加ください。

PwCコンサルティング X-Value&Strategyチーム キャリアセミナー 2024年5月16日(木)18:30~19:45 締切:2024年5月12日(日) PwCコンサルティング X-Value&Strategyチーム キャリアセミナー 新規事業戦略や成長戦略、M&A戦略策定・実行などを一貫して支援するX-Value&Strategyチームにてキャリアセミナーが開催されます!提供サービスや注力ソリューションの他、コンサルタントとの座談会も予定されている貴重な機会なので、興味のある方はぜひご参加ください。

クニエ CPチーム(消費財) キャリアセミナー 2024年4月23日 (火) 18:00~18:45 クニエ CPチーム(消費財) キャリアセミナー 日用雑貨・化粧・食品・飲料などの消費財業界出身者は是非この機会ご参加ください!NTTデータのグループとしてコンサルティングを手掛ける総合系ファームであるクニエのCP(消費財)でコンサルタントを目指す方向けにキャリアセミナーを開催されます。

その他セミナー一覧はこちらから

SDGs(Sustainable Development Goals: 持続可能な開発目標)に賛同し、これからも持続可能な社会の実現に努め、 森林資源や水資源を守る環境保護の取り組みとして、持続可能な森林の再生と管理に貢献しています。 SDGsプロジェクト始動! ムービンは持続可能な開発目標を支援しています ムービンはSDGsに賛同し、これからも持続可能な社会の実現に努め、 森林資源や水資源を守る環境保護の取り組みとして、持続可能な森林の再生と管理に貢献しています。

理想のキャリアを手に入れるために全力でご支援させて頂きます

ムービンでは今すぐのご転職でなくても、今後のキャリア形成や、ご転職に向けての中長期的なプランを共に考え、具体的なアドバイスをさせて頂いております。コンサルティング業界にご興味のある方はご自身では気づかれない可能性を見つけるためにも是非一度ご相談ください。

TOPへ

株式会社ムービンストラテジックキャリア

初めての方へ

弊社ムービンをはじめて知った方、はじめてサイトに来て頂いた方に、弊社ムービンの転職サービスについてのご紹介と弊社HPの活用方法をご紹介いたします。

20年以上にわたりコンサル業界に特化したご転職支援を行っています。スタッフも少数精鋭でホンモノの人脈・情報を有しております。

コンサルティングファームはもちろん、国内・外資の大手事業会社をはじめ、ファンド、投資銀行、ベンチャーなど様々な支援実績がございます。

コンサル業界専門だからこそ各コンサルティングファームの圧倒的な情報量を保有しており、戦略系、総合系(BIG4)、IT、人事など外資系日系を問わず、国内大手の有力ファームすべてがクライアント

プライバシーマーク

株式会社ムービン・ストラテジック・キャリア
Copyright (c) Movin Strategic Career Co., Ltd. All rights reserved.

よく見られているコンテンツ

【必見】未経験からのコンサル転職

ノウハウ大公開!
コンサルタント転職・対策方法

【必見】未経験からコンサルティングファームへの転職 その対策方法とは?

初めての方へ - コンサル転職をお考えの方へ

初めての方へ - コンサル転職をお考えの方へ

初めてムービンHPへ来た方へ、弊社のことやサイト活用法をご紹介します。

2024年に転職したい方へ コンサル転職対策プライベート相談会

2024年に転職したい方へ コンサル転職対策プライベート相談会

これから何を準備すればいいのか、疑問・不安に思っている方へ「コンサル転職対策プライベート相談会」を開催します。

パートナー 特別キャリア相談会

パートナー 特別キャリア相談会

弊社トップエージェント陣による特別キャリア相談会(1on1)を開催します。

お問い合わせ、ご相談はこちらから。すべて無料となっております。

Copyright (c) Movin Strategic Career Co., Ltd. All rights reserved.

MENU

1分程度の入力で簡単登録できます

コンサルタント転職支援、実績No.1の人材紹介会社ムービン。業界出身者が転職をサポート!

ムービン

まずはキャリア相談から

コンサルティングファーム各社で積極採用中

キャリア相談会

日本初!コンサル業界特化転職エージェント 創業25年以上の転職ノウハウ