【インド】来年に10.9％の昇給見通し、再び二けたの伸びに

インドの企業は2010年に平均10.9％の昇給を行う見通しだ。人材コンサルタント会社マーサーの調査で、こうした結果が出た。今年は8％程度の昇給にとどまるとみられているが、伸び率が再び二けた台に乗ることになる。また、過去1年には人員削減の動きが広がっていたが、ここにきて新規採用に積極的な企業も増えている。13日付エコノミック・タイムズ（電子版）などが伝えた。

　マーサーはインド企業93社を対象に調査を実施。業種別では、情報技術（IT）・通信が4分の1を占め、製薬が16％、消費財が14％などとなっている。
　
　インドの国内総生産（GDP）成長率は07/08年度（07年4月〜08年3月）まで3年連続で9％台の高水準を維持してきたが、世界的な金融危機の影響で08/09年度は6.7％に減速。政府の計画委員会は09/10年度について、6.3％との予測を示している。
　
　景気減速を受け、国内企業の賃金の伸びも減速している。07年の昇給率は約13％に達していたが、08年は8〜9％に低下。09年も8％ほどにとどまる見通しだ。
　
　しかし、ここにきて風向きに変化の兆しが見えている。自動車・自動車部品産業では来年の昇給率が平均12％に達する見込み。今年の9％程度から3ポイント上昇する形だ。景気刺激策の一環として、政府が昨年12月に物品税（付加価値税）を引き下げたことなどで、このところ国内の新車需要が盛り上がりを見せていることが背景にある。
　
　自動車関連以外では、製薬や消費財で来年に12％の昇給が予想されている。IT・通信や金融サービスでも10〜11％となる見込み。これらの産業の今年の昇給率は5〜9％程度にとどまる見通しだ。
　
　IT・通信分野の内訳を見ると、ITでは今年、大半の企業で賃金が据え置かれている。通信の伸びが大きいことで、IT・通信全体の昇給率が約5％に押し上げられている格好だ。IT単独の昇給率は来年、2〜3％ほどになる見通し。
　
　なお、製薬、消費財、製造業の今年の昇給率はいずれも7％強。ほかでは化学が比較的高い水準となる半面、エネルギーは例年より低い伸びにとどまりそうだ。
　
　■5割が新規採用を予定
　
　一方、インド企業の間では人員採用の意欲が高まりつつある。マーサー・インディアの幹部、ガンガプリヤ・チャクラベルティ氏は「（アンケートへの）回答企業の50％が、向こう3カ月で増員または退職者の穴埋めのための新規雇用を予定している」と語る。
　
　景気減速の中、7〜9月期には人員の自然減の割合が平均7.8％に後退。伝統的に人の入れ替わりが激しいエネルギーとIT業界でもこの比率が大幅に低下しているという。
　
　過去1年で人員を減らした企業は2社に1社を超える。とりわけ、IT業界ではほぼすべての企業が人員削減に動いている。
　
　■9割強が年一度の賞与
　
　従業員のモチベーションをいかに高めるかは、企業の業績向上につながる重要なテーマだ。チャクラベルティ氏は「企業は優秀な人材を引きつけ仕事に打ち込んでもらう必要がある」と指摘する。
　
　多くのインド企業が導入しているのは、会社の業績に個人の実績を加味して賞与を算出する方法。回答企業の92％が年に一度、賞与を出しているとした。残りは半期、四半期、月ごととなっている。
　
　給与の見直しは毎年4月に行う企業が多く、これに1月と7月が続く。ただ、今年は改定作業を3カ月以上先送りする動きが目立ったため、7月が最多で、今月に昇給を実施する企業も少なくないようだ。

2009年 10月16日
NNA

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