A.T. カーニー調査 中国の都市投資魅力度ランキング調査

経営コンサルティング会社A.T. カーニーのチャイナ・リサーチセンター(本部:上海)は、「中国の都市 投資魅力度ランキング」を発表した。これは、中国の各都市について、企業の直接投資先としての魅力度をつぎの4つのセクター別に順位を付けたものである(添付順位表ご参照):
(1)一般製造業
(2)ハイテク製造業
(3)金融サービス業、ならびに各業種企業の中国本社を構える都市
(4)アウトソーシング企業の顧客向けサービス/企業の社内サービス拠点

この結果から、中国で事業や拠点を展開する企業にとって、Tier1都市(政府直轄4市:北京、深?(シンセン)、上海、広州)のみならず、Tier2(省都、副省級市クラス)、Tier3(地級市クラス)の中小規模都市や西・北・内陸部の重要度が増していることが分かる。企業は、中国を一括りにして捉えるのではなく、国内情勢や地域・都市固有の傾向を掴み、各都市への投資戦略を構築する必要がある。以下に、同調査結果を分析した5つのポイントをまとめる。

■ ポイント1:一般製造業:
依然として沿岸部が中心だが、将来的には、西部・北部・内陸部への投資も検討すべき労働集約型の製造業の中心地は、Tier1都市から、杭州、寧波(ニンポー)、厦門(アモイ)等のTier2の沿岸部都市に移っている。しかし、これら沿岸部都市では、労働コストが急上昇し、中国全土からの労働者が集中して社会問題化している。そこで中国政府はここ数年、産業集積地を、西部や内陸部へと更に移動させるという方針の下、同地域のインフラ整備を進め、積極的な外資誘致施策を打ってきた。本調査でも、西部では成都(4位)、北部では大連(7位)、内陸部では鄭州(テイシュウ)(8位)、合肥(ゴウヒ)(9位)が上位に入っている。したがって、安い労働力を活用した生産拠点の展開を考えている企業は、西部・北部・内陸部への投資も検討すべき段階に入っていると言える。

■ ポイント2: ハイテク製造業、金融サービス業/企業の中国本社拠点:
引き続き、北京・深?・上海・広州のTier1都市が最も魅力度が高いTier1都市は、生活水準が高く、事業環境が整備され、語学力、知識、起業家精神を備えた優秀な人材が集まるが、労働・生活コストも高い。台湾系企業を中心に広州・深?からの脱出が始まりつつあるものの、投資先として魅力を感じている企業は依然として多い。

■ ポイント3:対顧客・対社内向けサービス拠点― 2つの戦略が選択肢になる
・利便性の高いTier1都市でまず展開し、営業コストが一定基準を超えたらTier2都市に移転
・当初から、コスト・サービス供給能力のバランスが良いTier2都市で展開現在、多くのグローバル企業が、利便性の高いTier1都市にサービス拠点を構えている。しかし、アウトソーシング産業の成長につれ、人材獲得競争が熾烈化、離職率も3割強に上り、コスト管理・業務の継続性への影響といった問題も懸念される。一方、Tier2では、アウトソーシング拠点の先駆者である大連(7位)だけでなく、南京(2位)、杭州(4位)、武漢(5位)、天津(9位)、西安(6位)が急速に伸びている。これらの都市は、スキルのある人材の供給量は未だ小さいものの、労働コストが低く、離職率も15-20%と低いため、今後の事業環境として期待できる。こうした複雑な事情を考えると、前述の2つの投資戦略オプションを検討するのが望ましい。

■ ポイント4: 中国の「生産拠点」から「ターゲット市場」へのシフト、ならびに中国国内市場拡大への対応
・中国市場に特化した新製品・新技術開発の投資を拡大すべき
・地理的に離れているTier2、Tier3都市に製品を供給する流通機能の確立が不可欠中国国内の消費購買力が上昇する中、中央政府は国内消費刺激策を積極的に打っていることから、上記2つの投資機会が生まれている。
 1つ目の機会の例には自動車産業がある。2009年以来、中国は世界最大の新車市場となり、今後数年は力強く成長すると予想されるが、この市場から恩恵を得られるかどうかは、各企業の投資戦略如何で大きく変わってくる。現時点で先行しているのは、ドイツや米国の自動車メーカーだ。合弁会社を設立する、中国内にR&D拠点を置き、優秀な地元人材が中国市場に特化した新技術を開発するなどして、一歩先んじている。
 2つ目の機会は、Tier2、Tier3の豊かな都市が海外ブランド・消費財にとって魅力的な市場に育ちつつあることによる。これらの都市での消費がきっかけで商品需要が全国的に拡大する可能性があることから、中国市場でのシェア拡大のためには、地理的に分散するTier2、Tier3を結ぶ流通システムへの投資が不可欠だ。

■ ポイント5:主要リスク (1)通貨リスク、(2)貿易摩擦リスク、(3)過当競争リスク、(4)中国国内での金融リスクへの冷静な評価と回避A.T. カーニーが特定した、中国市場における主要リスクはこの4つで、(1)(2)は中国を生産拠点として活用する企業にとって、(3)(4)は中国をターゲット市場として捉える企業にとって特に重要となる。

(1)通貨リスク:人民元の為替レートについて、中央政府が大幅な切り上げを実施することは考えづらい。とはいえ、現在のレートを維持し続けることは過剰流動性を招き、北京当局も、人民元の変動相場制への移行が中国経済の長期的発展に寄与することを理解している。したがって、マクロ経済の状況が許す限り、通貨政策はこれからも段階的に変更されると予想される。
(2)貿易摩擦リスク:中国は強硬な通貨政策をとっているため、貿易摩擦は避けられず、特にタイヤ、鉄鋼などで顕著だ。中国から低コストで部品・製品を調達したい企業にとっては、このリスクの監視が重要になる。
(3)過当競争リスク:金融危機後、多くの企業が成長する中国市場に注目し、自動車を含めた多くの産業が生産能力増強に動いた結果、1〜2年後には設備過剰となる危険がある。
(4)国内の金融リスク:金融危機時、前例のない景気刺激策を受け、多くの地方政府は、借入金を元に大規模インフラへの巨額投資を行った。この結果、地方政府の債務は2010年には80億元超に膨れ上がり、そのほとんどが商業銀行からの借入金だが、多くの地方政府には返済能力はない。地方政府の主な収入源は不動産取引で、経済発展を不動産業種に大きく依存している。中央政府は「不動産バブル」の崩壊を懸念し、規制を強化するものの、地方政府はズルズルと債務増加を続けている。仮に不動産価格の大幅調整が発生したら、地方政府の資金不足、債務不履行を呼び起こし、中国金融セクター中心に大規模な不良債権処理が必要となる。

つづきはこちらから
http://www.atkearney.co.jp/about/news2010.html

2010年 12月21日
A.T. カーニー

A.T.カーニー
1926年、「カーニー&マッキンゼー」という一つのファームからアンドリュー・トーマス・カーニーが設立。1995年、情報サービス企業であるエレクトロニック・データ・システムズ(EDS)の傘下に入るが、2006年に経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO)によって独立した。多くの金融機関や商社、消費財メーカーを立ち直らせたことが、経営者や財界人に知られており、少数精鋭のコンサルティングファームとして活躍の場を広げている。

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