A.T. カーニー調査 世界のオフショア市場魅力度 50位までランキング

"世界的経営コンサルティングファームのA.T. カーニーは、『2011年度グローバル・サービス・ロケーション指数調査』を実施し、世界のオフショア市場について上位50カ国の魅力度によるランキングを発表した。本調査は、2004年より継続的に実施されており、企業のITサービス、コールセンター、バックオフィス業務などの海外移転先であるオフショア市場の選択の指針となるべく各国の魅力度を評価し、さらにグローバル・サービス産業の現状と今後の展望を分析したものである。「経済的魅力」「労働力(規模とスキル)」「ビジネス環境」の3分野の39の評価項目について各オフショア市場のスコアを算出し、上位50カ国のランキングを行っている。

■ インド・中国・マレーシアの上位は揺るがず 上位3カ国のインド、中国、マレーシアはローコストでありながらスキルを持つ豊富な人材に優れ、前回調査(09年)から変化がない。しかしそれ以外では、経済危機後のグローバル経済の悪化により、魅力度に大きな変化が現れている。人材や環境に優れるがコスト高のために低位にあった先進国市場が、為替変動や賃金低下で比較的コスト安となり、英国やバルト3国など急上昇する国が目立つ。一方で、先進国では失業率の増加でオフショアへの風当たりが強まった。

特にバルト3国(エストニア・ラトビア・リトアニア)では、政府・民間で平均35%の賃金カットと厳しい歳出削減を実施した結果、経済面での魅力度が高まり、海外からの業務移転による新しい投資を呼び込んでいる。英バークレイズは09年よりリトアニア首都のビルニアスに金融サービス会社を置き、米ウェスタンユニオンも同国に地域サービスセンター開設を予定している。

■ クラウド登場によるサービス産業の変化 サービス産業そのものにも変化が起きている。従来は、複数年契約で顧客毎のシステムやカスタマイズド・プログラム構築とオペレーションを行い、そのための現地プログラマーやシステム・エンジニアの採用を特徴していた。しかし、最近はクラウドコンピューティングの登場で、標準化ソフトウェアによるソリューションの提供、さらに顧客の利用に応じ課金する新しいビジネスモデルが出現している。こうした状況の中、生き残りをかけるアウトソーシング・サービス企業は、新しい能力構築(補完を含め)を急いでいる。例えばインドのITトップ企業であるインフォシスやウィプロは従来のサービスベンダーの位置付けを超えるために、自らのR&D能力の開発に取り組んでいる。また、1位と2位のインドと中国はライバルであるが、一方で連携による専門性向上を図っている。インドのタタ・コンサルティング・サービス、インフォシス、ウィプロは揃って中国の四川省・成都に進出している。

■ サービス産業のオフショア化はさらに進む 国家財政破たん、通貨問題、失業率増加など、世界的に不安定な経済は今後もしばらく続き、グローバル・サービス産業には短期的には困難が続くと予想される。だが、長期的視点では、世界はますます深く緊密に結びつき、企業は低コスト化、効率化、サービス向上を求め、オフショア化への需要が増加することは間違いない。製造分野ではすでに多くの企業が生産拠点を世界各国に拡げ、新興国は世界の工場へと発展した。サービス産業においても、新興国のサービス産業や人材の能力向上とともに、海外移転可能な業務の種類や範囲も広がり、将来的に新興国が先進国よりも優位に立つといった大きな転換が起きるだろう。

■ 地域別の主要結果
アジア: 上位10位内に7カ国が入っている。インド(1位)、中国(2位)、マレーシア(3位)、インドネシア(5位)、タイ(7位)、ベトナム(8位)フィリピン(9位)である。これらは、インドの多彩な才能やスキルを持つ豊富な人材から、ベトナムの堅調な経済まで各々異なる強みを持つ。
中東・
北アフリカ: 欧州に近接し、巨大かつ優秀な人材プールを擁しているためにオフショア先としての魅力度が高い。最高順位のエジプトは4位であった(前回6位)。しかし調査は、エジプトの最近の政変以前に実施されており、現状では政治不安とカントリー・リスクが大きく上昇している。状況を詳細に検討し長期のリスクプロフィールを見極める必要がある。UAEは前回調査の28位から15位に上昇したが、主にサービス産業のハブであるドバイの存在が大きい。
欧州: 金融危機で深刻な痛手を負ったが、エストニア(18位⇒11位)、ラトビア(22位⇒13位)、リトアニア(21位⇒14位)は順位を上げた。ユーロ圏の国々は深刻な経済不況への対策に、国内の賃金やコストの削減を行い、として非常に競争力の高いコスト構造の市場となったことが理由である。英国も不景気によるポンド高と賃金低迷で前回調査の31位から16位に急上昇した。
北米: 米国は、世界のITアウトソーシング総額の63%(危機以前は67%)を占め、アウトソーシング・サービス産業の最大顧客である。しかし現在、米国は高い失業率に苦しんでおり、議会も巻き込み反アウトソーシングの声が高まっている。一方、米国はオフショア市場としても高度かつ多様なスキルを持つ豊富な人材が存在、アクセスの良さで18位となった。カナダはコスト上昇で26位から39位と魅力度が低下した。
中南米: 米国市場に近接しており、今後はアウトソーシング・ハブとして存在感がさらに高まると予想されている。同地域の最高順位は多様かつ豊富な人材が存在するメキシコ(前回11位)の6位である。この一年でメキシコの賃金が対ドルで18%も急降下し、米国企業にとってニアショア先(近隣市場へのオフショア)としての魅力度が高まっている。米国ではヒスパニック系移民が増えており、スペイン語と英語の両方の言語能力が高いことも魅力である。ブラジルは、前回と変わらない12位であったが、ITに強く、ソフトウェア開発やシステム・インテグレーションで優位性を持つ。

■ 日本について ちなみに、日本企業のオフショアはますます盛んになっているが、日本はオフショア先としてランキングに入っていない。日本にオフショアを依頼することを想定する海外企業はほぼ皆無であり、かつ日本もオフショア受託やサービスを提供する企業・機関が見当たらない。理由を""人件費の高さ""や""語学力の乏しさ""と結論づけがちだが、短絡的と言わざるを得ない。米国、英国、ドイツなど先進国(ティア2・3の都市)も上位にあり、日本には他の問題があることを示唆している。これはグローバル化、オープン化が急務とされる日本にとっては重要な課題である。A.T. カーニーのパートナーの佐藤勇樹は、「国のグローバル競争力比較では、日本は国の経営環境、税制、金融システムが弱いことがわかる。これでは仕事を任せる相手としては甚だ不安だろう」と述べる。"

2011年 3月8日
A.T. カーニー

A.T.カーニー
1926年、「カーニー&マッキンゼー」という一つのファームからアンドリュー・トーマス・カーニーが設立。1995年、情報サービス企業であるエレクトロニック・データ・システムズ(EDS)の傘下に入るが、2006年に経営陣によるマネジメント・バイアウト(MBO)によって独立した。多くの金融機関や商社、消費財メーカーを立ち直らせたことが、経営者や財界人に知られており、少数精鋭のコンサルティングファームとして活躍の場を広げている。

A.T.カーニーについて

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