A.T. カーニー緊急分析：わが国の今後のエネルギー政策のあり方急速な原発全廃の実現性は低い

経営コンサルティング会社A.T. カーニーは、東日本大震災、および福島第一原子力発電所事故の影響によって混迷するわが国の今後のエネルギー政策のあり方について、取りうる選択肢を6つの視点から分析・評価した。この結果から、原発の活用に関しては安全性に関する十分な議論が必要であるものの、一部世論にある「再生エネルギー代替による短期的な原発全廃」は、供給余力の観点から実現性は低いと見られる。また、再生可能エネルギーへの移行を進める場合は、産業界への影響、電力価格・補助金による国民への負担増を踏まえた冷静かつ現実的な議論が必要で、今後のエネルギー政策が社会全体へ与える影響を踏まえた上で、エネルギーミックスのロードマップ（工程表）を策定していくことが肝要だと考える。

■ 混迷する議論：国民、産業界、政府それぞれの利害を考慮し、「全体最適解」を探る検討が必要 今回の震災をきっかけに、国内では原発への関心が強くなり、安全性への危惧から原発縮小を希望する声が高まっている（各種アンケートでは、約7割が原発縮小、その内約2割が全廃を表明）。一方、産業界では、電力会社は供給責任を懸念し、需要家企業では、製品の安定供給やコストアップへの懸念から、脱原発を問題視する声も上がり始めた。政府・官庁は、従来のエネルギー基本計画を撤回し、再生可能エネルギーへの移行を表明しつつも、原発縮小に対しては慎重な姿勢を見せている。

こうした意見の相違は、各主体者が、今後の電力政策で何を重視するかという視点が異なるからだ。わが国の電力政策を考えるには、各主体者の利害と重視するポイントを考慮しながら、幅広い視点と客観的事実に基づく冷静な検討の中で、「全体最適解」を模索することが必要だと考える。全体最適解とは、すべての視点で理想的な政策はないことを意味し、安全性と産業育成のジレンマだけをとっても最適解を得るのは容易ではない。電力政策の作成主体者は、ジレンマ解決型政策の策定に向けた合意形成が求められる。

■ 電力政策オプション：取りうる選択肢は4つ 安全性と産業育成の観点から議論を整理すると、取りうる電力政策の選択肢は6つある。それらの内、「理想」と「現実」のギャップを考慮すると、「従来のエネルギー基本計画（2030年までに原発を50％程度に拡大）への急速回帰」や「原発全廃」は選択肢から外れ、、「�仝業�推進（従来のエネルギー基本計画への段階的回帰）」、「��既存設備の有効活用（電力単価の維持重視）」、「��再生可能エネルギーへの段階的移行」、「�ず得顕椎愁┘優襯�ーへの急速な移行」の4つが残る。
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2011年 5月23日
A.T. カーニー

A.T.カーニー
1926年、「カーニー＆マッキンゼー」という一つのファームからアンドリュー・トーマス・カーニーが設立。1995年、情報サービス企業であるエレクトロニック・データ・システムズ（EDS）の傘下に入るが、2006年に経営陣によるマネジメント・バイアウト（MBO）によって独立した。多くの金融機関や商社、消費財メーカーを立ち直らせたことが、経営者や財界人に知られており、少数精鋭のコンサルティングファームとして活躍の場を広げている。

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