2021年1月、東京発−ローランド・ベルガーは、最新のグローバルスタディ「ニューノーマルで消費はどう変わるか 新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらす世界的な消費行動の変化」(日本語版)を発表いたしました。本スタディでは、COVID-19発生以降、世界11か国*において消費者の行動がどのように変化しているかを分析し、これらの変化が消費財及び小売り企業のビジネスのあり方にどのような影響を及ぼすのか考察しています。なお、本スタディは、世界No.1CRMのSalesforce.comとフランスの調査会社Potlocの協力に伴う共同研究となります。
*対象国:アメリカ、イギリス、イタリア、サウジアラビア、スペイン、中国、ドイツ、日本、フランス、ブラジル、UAE(アラブ首長国連邦)の計11か国
要旨
新型コロナウイルス(COVID-19)は、生活、仕事、交流、消費のあり方を見直すことを、私たちに突きつけています。消費行動においては、多くの消費者は購買の場をオフラインからオンラインへと変えただけでなく、ネットワーキングやオンラインでのコミュニケーションに費やす時間が増えたことで、購買ファネルにおけるブランド・製品と消費者の関係性を変化させました。実際、コロナ禍において対象11か国平均でソーシャルメディアの利用が拡大した方は59%、オンラインストリーミングの利用が拡大した方は44%に上っています。
また、COVID-19による景気後退は、世界的な節約志向を生んでいます。2020年月々の家計支出を減らした世帯は、調査11か国平均で56%にも及びました。特に、アメリカ、イギリス、ブラジル、UAEなど、人口当たり感染者数が多い国がその傾向が顕著です。2021年も引き続き、全体の29%の世帯が支出を減らすと回答しており、世界的な消費低迷傾向は継続すると思われます。
消費者は支出を減らすために、2つの方法を用いています。第一に、消費する量そのものを減らすことです。実に79%の世帯が、あらゆる生活必需品の消費量を減らすことで、支出を減らすと回答しています。第二に、不要不急の嗜好品に対する支出を減らすことです。アパレル(スポーツを除く)、ジュエリー、時計などがその主な対象となっています。
次に、今回の共同スタディからみえてきた6つの示唆ついてご説明します。
「社会的価値」が消費の鍵
COVID-19は、消費者が自らの消費行動を見つめ直す契機となりました。実に34%の消費者が、モノの購入において、「サステイナブルな消費かどうか」を考えるようになったという結果が出ています。サステイナブルの意味合いは、消費者により幅広く、気候変動をはじめとする環境問題への影響にはじまり、地域社会への影響や長く使うことを前提とした消費になっているかなど、多面的な観点が含まれています。
スマートフォンで何でも売れる時代へ
COVID-19により消費の主戦場はリアルからデジタルへと完全に移行しました。なかでも、デバイス別のシェアにおけるスマートフォンの伸長は目覚ましく、2020年半ばには全体の54%にまで伸長しています。中でも、背景としてラグジュアリーや家具のような高価格帯の製品カテゴリーがスマートフォン経由で購買されるようになったことが特筆すべき変化です。
ソーシャルメディアが顧客接点の肝に
人との接触機会の減少で、ソーシャルメディアの利用時間が世界的に伸びています。加えて、55%の消費者が既にソーシャルメディアを使って購入したことがあり、COVID-19以降は17%の人が利用を増やしていることが明らかになっています。この傾向は特に若いユーザーに顕著で、Z世代のほぼ4分の3が、パンデミックの中でソーシャルメディアを介して買い物をしており、オンライン購買におけるソーシャルメディアの存在感は高まる一方です。
コストパフォーマンスの重要性の高まり
COVID-19により節約志向が高まったことに加え、前述のサステイナブルな消費を重視する流れから、世界的に価格と品質を両立させるコストパフォーマンスへの期待が高まりました。調査によれば、価格が第一の基準となったのはブラジルのみで、殆どの国でコストパフォーマンスが1位となりました。日本は、コストパフォーマンス、価格、品質の3つをそれぞれ重視する割合が不思議とバランスしており、社会の階層化の様相が垣間見えます。
消費の中心は生活必需品にシフト
買い物客は消費財カテゴリーの中でも、支出を主に生活必需品に移しています。具体的には、アパレル(スポーツを除く)、ジュエリー、腕時計といった嗜好品の消費が減少する一方、食料品・ヘルスケア・衛生関連用品の消費が大きく高まりました。
カゴ落ちを防ぐクーポンやお得感の醸成が重要
消費者は、慎重に支出を計画している反面、可能であれば買うものや買い方・習慣を変えたくないと考えています。そのため、回答者の5分の1がインセンティブとなるプロモーションを求めていました。ECのカゴ落ちを防ぐためのプロモーションや施策は非常に重要です。
今回調査結果に対して、ローランド・ベルガー消費財・小売りチームのシニアパートナーThorsten de Boerは次のように述べています。
「COVID-19は、消費者に倹約やサステイナブルな消費を意識させ、消費者の5年分のデジタルトランスフォーメーションをわずか数ヶ月で行いました。経営者は、これが消費財メーカーや小売業者にとって何を意味するのか考え、迅速に対応することが必要です。」
また、調査〜日本語版作成を担当した同チームのパートナー福田 稔は次のように述べています。
「今回調査した11か国では、コロナによる共通の影響が色濃くみられた一方、影響の度合いはパンデミック度合いや国ごとの特性により、違いが生じていることも明らかとなりました。消費財・小売り業は本質的にローカル対応が重要なビジネスであり、コロナ対応にもローカライゼーションが求められていると言えます。」
2020年 1月14日
PR TIMES
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