

movin:
次に御社の具体的なプロジェクトの事例についてお聞かせ頂ければと思いますが、これまでお話の中で何度か「暫定経営陣」という言葉が出てきましたが、言葉から何となくのイメージはつくのですが、具体的に実際にはどのようなことをやっているのでしょうか?
深沢様:
CEOやCFO、COOなどその時々によりポジションは変わりますが、実際に経営の指揮をとります。期間はおおよそ1年前後、ただその期間は、処理しなければならない事柄の軽重と、後任の適任者が見つかるかで決まります。
movin:
では、ほぼ、一般の企業で社長がやることを御社がそのままやっている、ということになるのでしょうか?
深沢様:
その通りです。その間その会社が直面している問題の優先順位が、平時とはちょっと違っているというわけです。
movin:
そして先ほどのようなお話しの流れになるんですね。でも、突然外部から来たコンサルタントが経営者です、社長ですと言われても、その会社全体は上手く回るのでしょうか?
深沢様:
それを上手く回るようにするのが仕事です。
movin:
それは、何かポイントがあるのですか?
深沢様:
最後は「人間力」に行きつくところもあるのですが、最初は、現状認識をきちんと全員で合わせる。これが不可欠になります。現状から甘い期待は全部排除する。これを合わせることが出来れば、どのくらいのマグニチュードの変革が必要か、おのずと見えてきます。できれば、プロジェクトの初日または2−3日でこれを済ませたいところです。
真の現状が見えたら、それぞれ固有名詞で誰がどのくらい改善に責任を持ってもらうのか、あてはめていきます。そこから先は、リーダーがいてしっかりした組織であれば、その方にやって頂きます。そうでない場合は、うちの人間をリーダーにおいてやらせます。
movin:
そうすると逆に、本当に破綻寸前、というよりは、まだちょっと余裕があるくらいの会社の方がやりづらいのでしょうか?
深沢様:
そうですね、逃げどころがありますので。その企業に対して、どこまで認識を早い時点で合わせるか。できることならプロジェクトを契約する段階で合わせておきたいですね。仰る通り、大事な点です。
movin:
クライアントのもともとの経営メンバーは、どの程度残るのですか?
野田様:
ケースバイケースです。GMなどの場合は、既存事業を残すべき成長分野と清算すべき売却分野に分けて、後者の事業において、我々の同僚のアルバート・コッチがCRO(チーフ・リストラクチャリング・オフィサー)という暫定経営陣に就任し、改革を主導しました。事業再生に際して本来企業が行うべきことは、強みを持つ成長分野に経営資源を特化し、それ以外の事業は出来るだけ早く整理・売却し、その資金を株主などのステークホルダーに返すということです。ただ、普通の企業の経営陣はこういうことをやった経験が無いことがほとんどです。そのような特殊な状況における能力・経験を持っている我々のようなプロフェッショナルが、そのプロセスを断行することに価値が有ります。日本で支援したライブドアの案件でも同様の役回りを果たしました。事業の価値を高め、迅速に売却し、株主に対して、その対価を還元するというミッションです。
また、他のケースでは、事業会社の役員、CXOレベルの経営陣、あるいは部長レベルでクライアント組織に入っていき、そこで事業を改善しターンアラウンドを加速させる、という役割を果たすこともあります。
暫定経営陣といっても扱うケースは様々で、クライアント企業の状況によって、我々が果たす役割は異なってきます。
movin:
なるほど。御社については公開されている案件も多数ありますが、JALの場合どういう入りこみ方をされたのですか?
野田様:
JALについては、最初は一部の業務の効率化から入っていったのですが、それが成功裏に終わり、次第に抜本的な改革を支援してほしいと求められ、最終的には経営の企画部門まで入り、再生計画を一緒に作っていくところまで関わりました。そこでの我々の役割の大きな一つとして、妥当な前提条件をベースとした、確度の高い事業計画を作成・補強することにより、金融機関からの継続支援についての合意を取り付けるといったことが含まれます。
movin:
クライアントとその状況によって、だいぶ異なってくるのですね。有難う御座います。