事業再生・企業再生ポジションの最新動向
特集 目次
事業再生の仕事とは?
事業再生(企業再生)と聞いて、皆様はどのような業務を思い浮かべますか?
「業績が悪い会社を立て直すのだろう」「ニュースになった○○社の再生のような話だろう?」といった漠然としたイメージをはお持ちだと思うのですが、実際のところ、事業再生(企業再生)の現場では何をやっているのか、具体的な業務のイメージをクリアにできている方は少なく、弊社にご相談にいらっしゃる方からも、よくご質問を受けます。
対象会社の課題、経営危機の状況にもよりますが、大きく分けると、事業再生のシーンで行うことは以下3点に集約されます。
【1】キャッシュフロー(CF)の改善
いわゆる「資金繰り」の目途をつけることで、本当に経営危機の瀬戸際にある会社は、「来月末には現金がなくなり支払いができなくなる」、「○○末には手元資金が無くなり借入金を返済できない」という状況にあります(逆に言うと、債務超過でも赤字でも、資金繰りが回っているときはまだ直ちにはつぶれません)。こういった状況の会社では、まず借入金返済のリスケ、支払いの繰り延べ、短期資金の調達、不要不急の支出のカットといった施策を打ち、CFを改善して会社が資金ショートしてつぶれることを防ぎます。
中小企業の再生などでは、そもそもキャッシュフローが厳しくなってコンサルティングファームやファンドに駆け込むことがあり、そういった場合には、まずここから手を付けます。
【2】バランスシートの再構築(財務リストラクチャリング・B/Sの改善)
2点目は、企業のバランスシート(財務諸表)の改善です。債務超過状態にあり、新しい資本を入れなければいけないケース、借入金が大きすぎどう頑張っても返済が不可能なケースにおいては、スポンサーを募り新しく出資をしてもらったり金融機関に債務カットを依頼することで資本構成を立て直しますし、事業運営に不要な資産がある場合には売却することで借入金の圧縮に充てる等の施策を行います。
また、非中核事業(ノンコア事業)を売却することで事業の選択と集中を測ったり、会社全体を存続させることは難しいものの、一部優良事業だけを存続できる可能性がある場合には、当該事業だけを切り出す形で会社分割を行うこともあります。
こういった財務リストラクチャリング、いわば「外科手術」を行うことで、会社を筋肉質にし、事業が回りさえすれば存続可能な状態に立て直します。当然ながら、ただお願いするだけでは出資してくれるスポンサーも債務カットに応じてくれる銀行もいませんので、財務リストラクチャリング後、どのような形で会社を立て直していくか再生計画を策定し、ステークホルダー全員に納得してもらう説明を行う必要があります。
【3】事業の収益性改善(オペレーション改善・P/Lの改善)
最後は、事業そのもの収益性改善、すなわち、P/Lの改善です。債務カットし、資本を注入し、不採算事業を整理しても、肝心の残った事業が赤字続きでは、再び経営危機に陥ってしまいます。そうならないために、どのように売上を伸ばしていくか、コスト削減して収益性を上げていくか…といったことを考え、実行に移していくことで、事業の収益性を改善し、安定的に黒字を確保できる状態にまで再生していきます。再生計画を策定している場合は、計画に沿って施策を実行していく形になりますが、実行フェーズで新たな課題/機会が見つかった場合には、そちらを反映して再生計画がアップデートされていきます。
以上【1】〜【3】が再生の主な業務内容になり、
【1】キャッシュフロー(CF)の改善 > 【2】バランスシートの再構築(財務リストラクチャリング・B/Sの改善)> 【3】事業の収益性改善(オペレーション改善・P/Lの改善)
の順に緊急度が高くなりますが、実際のところは3つを同時に走らせながら会社の状況に応じて優先度が高い作業に手を付ける…といったケースが多くなります。
事業再生の最新トレンドは?
上述のような業務を行う事業再生(企業再生)ですが、トレンドとしては、元々はキャッシュフローの改善や財務リストラクチャリングといった財務面の再生から始まっており、そこから事業面の再生に領域を広げてきたという歴史があります。元々銀行員や会計士の方が多かった再生コンサルタントに、数年前から経営コンサルタントから転身されるケースが増えたのも、そういった背景が1つにあります。
更に近年のトレンドとしては、特に事業再生コンサルティングファームにおいては、再生=本当の意味でも経営危機における再生(In-Crisisの再生)と捉えるのではなく、上記に加えて、事業に陰りが見え、このままでは経営危機になってしまう恐れがある状態に手を打ち事業を立てなおす(Pre-Crisisの再生)ことや一度経営危機を乗り超えた後、5年、10年と再成長を続けるための手立てを考える(After-Crisisの再生)ことまでを再生と捉えて、従来の前段階/後段階まで手を広げています。
また、同じく特に事業再生コンサルティングファームにおいては、経営不振にある(日本の大企業の)海外子会社の再生というのが大きなテーマの1つになっており、事業再生=ドメスティックというイメージも変わりつつあり、グローバルな再生案件も増えつつあります。
ハンズオンの再生とは?
“ハンズオン”という言葉を聞いて皆様はどのような印象を持ちますでしょうか。
ハンズオン、ハンズオフとは、企業買収や投資、再生を行う場面において、その際にどのくらい対象企業の経営に関与するかを表現する時に用いられる言葉です。
「ハンズオン」は、自らが対象企業の社長や取締役など経営主体となり、経営に深く関与するスタイルを言います。一方で、「ハンズオフ」は経営自体を対象企業の経営陣に任せることを言います。
ハンズオンは自らが経営のハンドリングを行いますので、改革のスピードが速いというメリットがある一方で、外部の人間が企業に入り込んで変革を行うわけですから、プロバーのマネジメント層や社員とは対立しやすい傾向があります。
ハンズオフでは一般に対象企業の経営を外側からアドバイスする形で変革に導いて行きますので、ハンズオンと比べると衝突が起きにくい一方で、事業の変革に時間を要する傾向があります。
再生領域では、ハンズオンと言うと比較的常駐支援型、ハンズオフと言うと支援先企業に常駐はせず、外部から経営をアドバイスする形で中長期的にでモニタリングしつつ、対象企業の経営を改善して行く場合を指すケースが多いです。
事業再生コンサルティング/事業再生ファンドの主な企業は?
企業再生の主なプレイヤーとしては、主にFAS(財務会計系)のコンサルティングファームの事業再生部門や、事業再生に特化した(強みを持つ)コンサルティングファーム、加えて再生ファンドの3種類に大きく分かれます。
【1】FAS(財務会計系)のコンサルティングファームの事業再生部門
FAS(財務会計系)のコンサルティングファームについては、元々は財務面からの再生を強みをとしている企業が多く、KPMG、デロイト、PwC、EYの4大監査法人のFAS系コンサルティング部門が大手ですが、山田コンサルティンググループやエスネットワークス、AGSコンサルティングのような中小・中堅企業を対象とした会計事務所を母体にした再生コンサルティングファーム、加えて中小から大手まで幅広いクライアントに対して再生コンサルティングサービスを提供する独立系のロングブラックパートナーズやアドバンスト・ビジネス・ダイレクションズといったファームも現在積極的に採用を行っております。
【2】事業再生に特化した(強みを持つ)コンサルティングファーム
事業再生に特化した(強みを持つ)コンサルティングファームは、旧産業再生機構出身者が設立したコンサルティングファームや、オペレーション改善に強みを持つコンサルティングファームなどが挙げられ、前者の代表例としては経営共創基盤やフロンティア・マネジメントが挙げられます。これらのファームでは財務面に強みを持つ人材、事業面に強みを持つ人材双方が在籍しており、比較的大きい再生案件に強みを有します。後者の代表例としては、常駐実行支援を特徴とするAPIコンサルタンツやアバージェンスが有名であり、業務オペレーションの変革に高い専門性を有し、常駐プロジェクトにより事業プランの実現性を高め、短期的に業績改善成果を創出することでクライアントのニーズに答えています。
現在募集中のセミナー情報
開催日: オンライン: 2022年5月25日(水) 19:00〜21:00
【3】再生ファンド
再生ファンドとしては、いわゆるバイアウトファンドが案件の種類の1つとして再生案件を行うこともありますが、特に再生案件が多いファンドですと、地方の中堅企業に投資しバリューアップを行っているジェイウィルパートナーズやルネッサンスキャピタルグループ、旧企業再生支援機構が母体となる地域経済活性化支援機構が挙げられますが、これ以外にも多数のファンドが再生案件を取り扱っています。
事業再生コンサルティングと事業再生ファンドの違いは?
事業再生(企業再生)においては、再生コンサルティングファームと再生ファンドの双方重要な役割を果たしており、対象企業の再生を支援しています。ただ、立ち位置としては、コンサルティングファームはあくまでも対象企業(もしくはスポンサー企業)からフィーをもらってコンサルティングを行う外部のアドバイザーであり、ファンドは対象企業に出資し、出資した資金をエグジットすることで利益を上げる投資家になります。
この立ち位置の違いが、事業再生(企業再生)において、対象企業とのかかわり方、関与できる案件の多寡、関与できる企業のステージといった点の違いに現れてきます。やや突っ込んだ話になりますので、この記事では細部への言及は避けさせていただきますが、この点についてご関心をお持ちの方は、後述の個別相談会に是非お申込みいただけますと幸いです。
事業再生コンサルティング/事業再生ファンドの求める人材像とは?
事業再生コンサルティングファームの求める人材像
事業再生コンサルティングファームにおいては、数字に強い方ないしは経営コンサルティング等の経験を持ち事業の分析・改善ができる方がメインターゲットになっており、公認会計士や税理士などの士業の方や、投資銀行系業務の経験者、経営コンサルティング業務経験者が採用のターゲットとなっておりますが、若手であれば銀行の融資経験者や、会計士や税理士の科目合格者等も積極的に選考の対象になっています。一方で、人や組織の行動変革にアプローチしていく再生コンサルでは基本的なファイナンススキルや地頭の良さなどももちろん尚可要件ではありますが、それ以上に組織に活力を与えて行くような対人コミュニケーション能力の高さが求められています。
また、再生領域は他の領域と比較してもハードワークが求められる傾向がありますので、もちろん体力面、精神面でのタフネスも重要な選考要素となります。
事業再生ファンドの求める人材像
事業再生ファンドについては、メインターゲットは再生コンサルティング経験者、投資銀行業務(M&Aアドバイザリー)経験者、戦略コンサルティング契約書等になっていますが、若手クラスの採用においては、銀行の融資経験者や会計士のハイポテンシャル人材を採用するケースもあります。
事業再生に関するキャリア相談会
以上、事業再生(企業再生)の詳細についてまとめさせていただきましたが、業務内容の細部や各社の具体的な違い、現在の求人状況など、紙面ではなかなかまとめきれない内容も多数ありますので、事業再生業務に関心をお持ちの方は、是非一度ご登録いただき、疑問点やお悩みをご質問いただくとよいかと思います。今すぐに転職をお考えでなくとも、ざっくばらんにディスカッションさせていただきますので、是非お気軽にご登録いただけますと幸いです。
マーケット状況やご志向、キャリアプランの相談でも結構でございます。
ご自身の可能性を知りたいという方はぜひ一度弊社スタッフへお問い合わせください。
ご自身では気づかれない可能性も見つかるかもしれません。
事業再生コンサルティング/事業再生ファンドの転職事例
年代 |
前職・職種 |
転職先 |
20代
|
メガバンク 法人営業
|
大手FAS系コンサルティングファーム 事業再生部門
|
30代
|
外資系経営コンサルティングファーム コンサルタント
|
大手FAS系コンサルティングファーム 事業再生部門
|
20代
|
監査法人 会計士
|
大手再生コンサルティングファーム
|
20代
|
大手リース会社 法人営業
|
独立系再生コンサルティングファーム
|
20代
|
メガバンク 法人営業
|
老舗再生ファンド
|
20代
|
大手FAS系コンサルティングファーム
|
老舗再生ファンド
|
20代
|
日系投資銀行 M&Aアドバイザリー
|
老舗再生ファンド
|
30代
|
メガバンク 審査/再生ファイナンス
|
老舗再生ファンド
|
事業再生・企業再生ポジションへの転職 転職体験談
事業再生・企業再生ポジションの求人情報
マーケット状況やご志向、キャリアプランの相談でも結構でございます。
ご自身の可能性を知りたいという方はぜひ一度弊社スタッフへお問い合わせください。
ご自身では気づかれない可能性も見つかるかもしれません。
マーケット状況やご志向、キャリアプランの相談でも結構でございます。
ご自身の可能性を知りたいという方はぜひ一度弊社スタッフへお問い合わせください。
ご自身では気づかれない可能性も見つかるかもしれません。