
Movin:
最後に貴社が求める人材像についてお伺いします。アソシエイト/シニアアソシエイトクラスにはどのようなスキル、パーソナリティを期待しますか?
川原様:
ハードスキルとしてはやはりフィナンシャルモデルが一通り理解できること、それから会社を評価する時の基本的なポイントが分かっていることが重要です。ただ、最近の人たちはよく勉強している印象です。
一方、ソフト面では自分の意見をしっかりと発言できる人が望ましいです。先程申し上げたように、カーライルでは一人一人の貢献が非常に大きく、全員が優秀なので、全員が全力を発揮してくれたら何の心配もありません。
しかし、だからこそ3人のチームにおいて、一番若手のメンバーが遠慮して自分の考えを発信せずにいると、残りの二人だけで考えなければなりません。遠慮して自分の意見を言わないということは、チームに貢献していないということなのです。
遠慮する気持ちはよく分かりますが、社会人経験が浅い/深いはあっても、一生懸命考えた上で出てきた答えは、そんなに外れてないんですよ。ちゃんとしたことを言っているんです。
だから、若手にも思っていることをしっかりと言ってほしいと思います。僕たちは「今この状況を見てこんな風に感じます、こういう風に思います。なぜならこうだからです。」と言える人を求めます。
真剣な議論ですから、聞いた方も「それはなぜか?」「こういう考え方もあるのではないか?」といった形で議論はぶつけます。けれども僕たちシニアメンバーも若いメンバーの意見を真剣に聞いていますし、変に怯まずに自分の考えを言ってくれる人、ある意味生意気な人の方が良いです。経験則からすると、その生意気な意見は大体正しいことが多いのです。
Movin:
非常によく分かりました。御社の評価制度においても、上記のポイントは重要な要素と位置付けられているのでしょうか?
川原様:
非常に重要視しています。評価の時には、「アントレプレナーシップ」や「オーナーシップ」といった項目に包含されています。要するに、一担当であってもこの会社全体の責任を持っている者として考えられているかということです。
例えばある投資先において、僕が責任者で、VPが一人、アソシエイトが一人というチームの場合、このアソシエイトには僕の立場になって物事を想像し、考えることを期待します。想像ですから完璧ではないし、間違いもあります。しかし、僕の視点を持ちながらも自分の視点で物事を考えると、議論の際に三人の話がしっかりかみ合い、非常に良い結果が出ます。
他方、悪い例を言えば、「自分はこういうアサインメントだからこれだけをちゃんとやれば良い」という形で自分の仕事を区切ってしまう人、チームの他の人がやっていることに興味を示さないケースです。最初から役割がはっきりしている組織で育った人の中には、こういう考えに陥ってしまう人もいるのですが、そうすると孤立してしまいますし、仕事も楽しくなくなります。ですから、色々な意味で、自分の意見を持ち、自分の頭で考えて、実践してくれる人を求めています。
Movin:
最後に、若手がPEファンドにおいてキャリアを積み重ねていく上で、どのようなポイントが重要とお考えか、お聞かせいただけますでしょうか?
川原様:
先程のポイントに加えて、投資先に対するリスペクトを持つということです。例えば、投資先の社長が言っていることが、僕らではパッと分からないこともあります。「なぜこんな言い方をするのだろうか?」「なぜその点を重要視するのだろうか?」と。
そこで「社長の考えが間違っているのではないか?」と思う7歩くらい前に、「自分の理解が足りていないのではないか?」と疑う必要があります。「その会社がどういう状況で、社員が何を考えていて、どういうところに社員の想いがあって…」といった背景を理解することで、社長の言っていることの意味がやっと分かるということがしばしばあるのです。
もちろん、自分を疑って会社のことが本当に理解できた上でも意見の食い違いがある場合には、ギャップを埋めるために議論します。ですが、初めから「社長は間違っているのではないか?」と思ってしまうと、永遠にお互いの考えがかみ合わなくなります。更に怖いのは、かみ合っていなくても僕たちは株主だから投資先を動かせてしまうのです。我々から強く言われれば、投資先は渋々言うとおりにやります。しかし、それでは絶対に間違った方向に行ってしまいます。株主という立場を勘違いしてはいけません。
株主は「会社の所有者」だと資本主義では教えられますが、僕たちの考える株主は「会社のパートナー」です。これまでお話ししてきたように、投資先の成長を支援した結果として自分たちもリターンを頂き、そうやってリターンを頂くのが我々の仕事だから、真剣に投資先をサポートするし投資先にも真剣にやってもらう。けれども、それは決して上下関係ではなく対等な関係なのです。このことを決して忘れないことが、最も重要だと思います。
Movin:
本日は非常に貴重なお話をお聞かせいただき、誠にありがとうございました。
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