ベイン・アンド・カンパニー プリンシパル 神谷 健志氏 インタビュー

対談 ムービン・ストラテジック・キャリア 久留須 親

ベイン・アンド・カンパニーの特徴(結果主義)

movin:

本日はお時間を頂戴しまして誠にありがとうございます。
まず、ベイン・アンド・カンパニーの強みや特徴、働くうえでの醍醐味に関してお聞かせ頂けますでしょうか。

神谷様:

大きくは3つあります。1つ目は『結果主義』ということです。「結果にこだわる」という点なのですが、これに関しては恐らく他ファームさんも仰られる、ある意味使い古された言葉なのかな、という気もしています。しかしベインとしての一番の違いは、「ちゃんと数字に上がってくることを期待している」ということであり、それが「結果にこだわる」ということだと思っています。
私が経験した直近の事例では、経営再建に苦労されているリテール系のクライアント企業様のプロジェクトが挙げられます。リテール業界は大きな変化が少ない業界だと思われるかもしれませんが、あるファンドさんが参画し、そこに我々が半年間買収後の立て直しで入り、そこから1年半弱でイグジットを果たしました。その時にEBITDAベースで3割位改善したんですね。ファンドさんにしてはホームランに近い案件でした。実は私自身あまり期待してなかった部分もあったのですが、実際に数字に現れるということが本当にあるんだな、ということを実感しました。我々の取り組み全てが実を結ぶわけではないですが、実際に結果を目指して取り組むと、かなり高い確率で実現できるということが分かりました。こういった「結果に対するこだわり」というのが1つ目の特徴です

movin:

なるほど。その「結果を出す」ということに対して、特に取り組まれていることなどはございますか?

神谷様:

実はクライアントにお伝えすることって、意外に「当たり前のこと」を言っているんですよ。実際のプロジェクトでも、クライアントが「そんなの知ってるよ」と思うような、クライアント内でも認識されていることを提案するということも多いんです。ただ、その「当たり前のこと」が実際にきちんとできているかというと、できていないことが非常に多いんですね。それをできるようにするためには何が必要か、というのを徹底的に潰していくということが重要なのだと思います。先程申し上げた店舗系リテールのプロジェクトでもやるべきことは「如何に店舗の売上を上げるか」という当たり前のことだったのですが、10個も20個もやりましょうと言うのではなく、「これとこれとこれは絶対やりましょう」と明確に伝えて、それらをとにかく徹底的に追い続ける。そして、追うために必要なことは全て実行してもらう、という形でした。 我々がそのクライアントに入り込んだ半年の間は、やるべきことができていない場合にそれがなぜできないのかを調べ、システムが問題であればシステムを作ったり、リソース不足であればリソースを足したり、徹底的に全ての原因を取り除いていき、最終的にこのような成果に繋がりました。だから、あまり飛び道具がある訳ではないと思うんですね。

movin:

やるべきことをやる。

神谷様:

はい。

movin:

半年の間に、クライアントの意識も変えてしまう位まで手を入れている、ということですよね。その後1年間は、クライアントが自走するものをモニタリングするだけで成功しているので。

神谷様:

そうですね、最初の3ヶ月で青写真を描いて、残りの3ヶ月はその実行をサポートさせて頂きました。「やるっていっても本当にできるの?」という意識がクライアント内にもありましたので、そこに並走する形で支援させて頂きました。例えばうちのチームメンバーが実際に店舗に入り込み、半分店長代理のような形で1~2日業務を行い、その後店舗のバックヤードで店長になりきってインカムを付けてスタッフに店の対応の指示を出したりもしました。「今はこうじゃなくて、こういう風にして下さい」というようなところまで一緒にやりました。

movin:

それは凄いですね。

神谷様:

そうしてみると描いてたプロセスプランが非常に些細なことで動かなかったりもするんですよね。例えば端末の位置が働いているスタッフの近くに無い、など様々な障害が浮き彫りになり、改善点が全部見えてくるわけです。それを一つ一つ潰していって、動かしていくんですね。

movin:

なるほどですね。「当たり前のこと」と仰られますが、その当たり前のことをしっかりやれるところにも難しさがあると思うのですが。

神谷様:

まさに仰る通りです。当たり前のことであるが故に、クライアントも分かっているから、当然全て過去にトライされているんですよ。しかし、やはり動かない理由が何かあるんですよね。それは得てしてクライアントの内部で「触ってはいけないもの」だったりするんです。

movin:

なるほど(笑)。

神谷様:

まぁ、あえてそこはあまり遠慮せずに(笑)、不躾にズカズカと土足で上がり込んで、「これはこうなってるから動かないんですよね」と伝えます。「人が足りないんだったら足しましょう」とか、「こういう色々な無駄なプロセスがあるんでしたら止めましょう」とか。そういったことを言えるのは、ある意味外部コンサルの強みでもあり、多分それが求められている役割なのかなと思います。

ベイン・アンド・カンパニーの特徴(育成方針)

movin:

なるほどですね。わかりました。具体的にありがとうございます。
それではベイン・アンド・カンパニーの特徴の2点目に関してお教え頂けますか。

神谷様:

2点目は『キャリア育成の方針がかなりしっかりしている』という点です。私はベインにはコンサルタントとして入社し、最初は育成される立場で、途中から育成する立場になっていきました。育成されている時はプロジェクトが終わってレビューをもらう際に、色々なことを言われるので、「こんなことまで言われるんだ…」という感じだったのですが、いざ逆の立場になってみると、全ての自分の下にいるコンサルタントに対して同様のレビューをすることが如何に大変か、ということが非常によく分かりました。ベインは、この育成に対する労力のかけ方が凄いんじゃないかなと思っています。先程申し上げたレビューは、1つのプロジェクトが終わる度にA4にして2~3枚程度のレポートとして与えられます。我々が書いたレポートはパートナーなど、様々な人がチェックをします。マネージャーにしてみると、仕事が終わってほっとしたところにこのレビューを書くという仕事があり、そのレポートについても色々と上から言われるという大変な作業ではあるんですけどね(笑)。

movin:

ですね(笑)。

神谷様:

はい。だから育成に対する労力のかけ方は凄い力を入れていると思います。
それ以外にも、半年に1度、全体のパフォーマンスの査定をやっています。弊社ではこれをレビューミーティングと言っています。社内の最も大きな部屋にパートナー、プリンシパル、マネージャー全員が集まり、マネージャーより下のコンサルティングスタッフ一人一人の評価・育成について朝から晩まで丸1日かけて全員がディスカッションするんです。

movin:

それは凄いですね。

神谷様:

もちろん評価は人によるので何もなければ短時間で終了する場合もありますが、人によっては1人に30分位かけて、「この人のパフォーマンスはなぜこうなってるのか」、「どうすれば改善するのか」を議論します。議論されるテーマは、純粋にプロジェクトにおけるパフォーマンスの話もあれば、プロジェクト外での色々な活動の場合もありますし、海外へのトランスファーについて等、様々な議題があります。色々なテーマで「何をやればこの人は伸びるのか」ということを、パートナー、プリンシパル、マネージャーが全員集まって議論します。育成に対して注いでいるエネルギーや時間はかなりのもので、それこそ時間単価の高いパートナーやマネージャー陣が全員、丸1日10時間とか拘束される機会損失は多大であるとも考えられるとは思うのですが、そこをあえて必要だと割りきって投資をしているというのが、やっぱりベインの特徴なんじゃないかなと思います。
これが2つ目の「育成」に関する特徴で、「プロフェッショナルディベロップメント」と我々が呼んでいるものですね。

ベイン・アンド・カンパニーの特徴(グローバル)

movin:

ありがとうございます。3点目はいかがでしょう。

神谷様:

3つ目は『グローバルである』という点です。私自身も5年位前のコンサルタント職の時に6ヶ月間、サンフランシスコにトランスファーをしたことがあり、そこで驚いたことがあります。それは、ベインは本当にグローバルでワンファーム、ワンベインであるということです。グローバルのどのオフィスでも、使う言葉もプロジェクトの進め方も全く同じなのです。
私はサンフランシスコで6か月間1つのプロジェクトに最初から最後まで参画したのですが、プロジェクトの最初のミーティングでディスカッションする内容がほとんど東京と同じなんですよ。「チーム運営についてこういうことを注意していこう」とか、「クライアントとのやり取りはこういう風にしていこう」など、きちんとプロジェクトを進捗させるために必要な「地ならし」のような部分まで東京と全く同じことをやっていました。いわゆる分析ツールやナレッジがグローバルで共有されているなどはどのファームでもよくある話だとは思うのですが、ケースの運営や仕事の進め方に至るまで細かくグローバルで決められたものがあり、それがどの国でも徹底されているというのは、かなり凄いことなのではないかと思います。
もう1つ、『グローバルである』、という点について言及したいことがあります。それは、グローバルの垣根が全くなく、世界のどのオフィスにも気軽に相談できる環境であるということです。マネージャーになると、プロジェクトのスタートアップ時に色々な人から色々な仮説を聞きたいのですが、社内の情報共有システムでは物足りない時に気軽に他のオフィスのコンサルタントに相談できる環境が整っています。ベインでは「グローバルエクスチェンジセンター」という、プロジェクト情報を共有できるシステムがあり、そこに色々な過去のプロジェクトの知見が蓄積されているのですが、その情報だけではよく分からないことも多いんですよ。そういう時に他のオフィスのコンサルタントに電話やメールをしてみて、「こういったことが今うちのプロジェクトで問題なんだけど…?」という形で聞いてみると、それにしっかりと答えてくれますし、メールをして返って来ないっていう経験はほとんどありません。
それはどんな偉いパートナーであっても同様です。「これはパートナーだな」と思ってメールを送ってみると、やはりそれに返事が返ってくるのですが、よくよくその人の情報を見ると、ベインに入って40年経っているシニアパートナーだったりして、「そんな人だったんだ」と後で気付くというようなこともありました(笑)。
そういう人達でも結構フランクにコミュニケーションしてくれるんです。そこに上と下の垣根もないですし、グローバルの垣根もないという点は非常にやり易いですし、手間がかかることも対応してくれるグローバルの文化というのは凄いことだと思いますね。

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