A.T. カーニー プリンシパル 針ヶ谷 武文氏インタビュー

A.T. カーニーの育成方針

movin:

ジュニアコンサルタントの役割やスキルセットについて、A.T. カーニーの中で脈々と受け継がれているものがあると思いますが、成長に関する取り組みであるとか、意識されていることがあるのでしょうか。

針ヶ谷様:

まずコンサルタントのスキルは、入社して2ヶ月程度OJTで鍛えます。OJTといっても、出来るだけ実践に近い形でトレーニングを受けられる様、工夫をしています。1つの例ですが、ジュニアコンサルタントの基本と言ってもいいインタビューメモの作成に関して、実際のプロジェクトで行ったインタビューの録音からメモを書き、それをマネージャーが実地同様に指導を行う、といった事も行っています。

あるいは、クライアントとの討議用資料や提案書の一モジュールを切り出し、同様にマネージャー以上のシニアが、実地のプロジェクト・提案活動同様の目線・基準でフィードバックを行います。
OJTについて言えば、やはり若いコンサルタントにどの様に機会を与え、自律的に動ける様に育成するか、という点が重要だと考えています。実際に、メンバーに仕事を任せながら、どの様に育成できたのかという事はマネージャーの重要な評価項目になっています。

movin:

なるほど。

針ヶ谷様:

メンバーに任せるということは、当然リスクも伴います。ある一定の時間をかけても求められる水準に達しない可能性がある場合、最後にマネージャー自身が限られた時間でクライアントに提供できるレベルまで持って行くことが必要になる訳です。

もう1つはプロジェクトの中で、マネージャーの問いかけの質をどの様に上げていくか、という事が挙げられます。
例えば「これってなんでこんな風に考えたの」とか、「例えばクライアントがこんな風に問いかけてきたらどうするの」、あるいは「役員クラスの人ならこんなことを言うかもしれないよね」「それに対して、あなたはどうするの」といったものです。そういう問いかけなどに対して日々切磋琢磨をしている、あるいはマネージャー間でどういうやり方がいいのかを比較する文化があり、それらのやり取りを通じて、コンサルタント自身が、ある種の価値観や考え方を植え付けられているのだと思います。
これらのワークライフバランスを念頭に進めていくこととなります。

movin:

なるほど。実際にそのようなOJTでやる時に、マネージャーも一緒に成長していくような仕組みで、若手も成長させていくという、取り組みをされているんですね。

針ヶ谷様:

はい。
ワークライフバランスといったとき、仕事の厳しさを時間で計る面と、コントローラビリティで計る面があると思います。仕事の裁量権が無く目的も良くわからずに、ひたすらこれをやらなくてはダメだといってやらされている状況と、自分としてやらなければいけないから主体的に動くという状況は全く異なりますよね。たとえば私が直近担当したプロジェクトは、プリンシパルの下にマネージャーもアソシエイトもおらず、その下にはアナリストが1人だけだったんですが、そのような場合アナリストは自分でやらなくてはいけないという、非常に強い想いを持って主体的に動くんですね。 次回のクライアントとのミーティングは、こんなテーマでこんな風に進めたいんだという風に、自分から持ってくる様になります。そうすると私がそれに対してアドバイスをするのですが、それは夜や、土日のどちらかで行わざるを得ない事もあると思います。でも、そういった状況の時は本人に後で話を聞くと、辛くは有ってもとても充実しているし、勉強になったと言われます。そういった育成の結果が見えてくるとこちらとしてもとても充実感がありますね。

movin:

なるほど。マネージャーは、若手といえども自主性を損なわないようにしっかりと仕事を任せる一方で、、最後は責任もちゃんと自分でとる訳ですね。

針ヶ谷様:

そうですね。そのようなことができる人間がマネージャーとして優れているというように、相互にリスペクトする文化は有る様に思います。

movin:

なるほど。そのようなことをマネージャーの方がやっていくなかで、コンサルタントとしてのインテレクチュアルなスキルだけではなく、クライアントとどう接するかというインターパーソナル面も伝えられていくわけですね。そして結果として先程おっしゃっていたようなクライアントからの高い評価につながる訳ですね。

針ヶ谷様:

そうですね。もう1つ、ある程度の規模があるが故の強みとして、プロジェクトをやる時に、「こんな領域」というところであっても、誰か知っている人、経験がある人がいることも挙げられると思います。例えば産業材のちょっとマニアックな領域でも、国内或いは世界の事業構造をどのように見たらよいかという議論についても、相談に乗ってくれる人を見つけやすいという事が有ると思います。「コンサルタント」っぽい高飛車な感じは無く、ふらっと歩いて行き「ちょっとこんな点に悩んでるんだけど相談に乗ってよ」というと「あ、いいよいいよ」という感じで議論する、こんなシーンはオフィスで常に見かけます。

movin:

要するにA.T. カーニーのネットワークや、人脈を使っていくということかと思いますが、その点に関し、会社としてネットワークを設計する取り組みは何かされているのでしょうか。

針ヶ谷様:

はい。ネットワーキングはオフィシャルな面とアンオフィシャルな面があると思っています。オフィシャルな面では、我々は前職での経験と、A.T. カーニーに入ってからどういうプロジェクトをやってきたのかということのトラックレコードをグローバルで管理しています。ある領域、あるプロジェクトの経験がないかどうかはそういった社内のソーシャルネットワーキングシステムを使い検索し、電話ではなくてチャットソフトのような手段で情報交換をします。国内であればオフィスに行き直接話しをします。

movin:

なるほど。

針ヶ谷様:

もう1つアンオフィシャルな面、これはいわゆるボンディングです。最近我々のオフィス規模がどんどん大きくなっており、またさらに規模を拡大しようとしているので、アンオフィシャルな部分にももっと投資をしていこうという話になってきています。最近の例で言うと、再来月にみんなで沖縄に旅行に行きます。我々が「ユニティ」と呼んでいる社員旅行はユニークな企画が多く、現地に行って遊びながら仲良くなる事に邁進するイメージです。
あともう1つはアラムナイネットワークも当然重要で、アラムナイパーティを開催するとさまざまな分野で活躍されている沢山の方が参加され、公私の面で相談に乗って頂く機会を設けられる様になっています。このような点は規模と歴史の面で我々の強みの一つと考えています。

アサインメント・福利厚生(男性の育児休暇)

movin:

次にA.T. カーニーのプロジェクトアサインメントや、福利厚生面で男性の育児休暇などについて伺えればと思います。

針ヶ谷様:

まずアサインメントに関してですが、我々は公募制というものを採用しています。公募制の目的というのは2つあり、1つはコンサルタントに対して、パイプラインをある程度オープンにするということです。つまり今、オフィスとしてどの様なテーマのプロジェクトをこれからやろうとしているかということを明らかにしています。もう1つはそれに対してコンサルタントが、応募するという権利を担保しているという点です。
また、応募したいプロジェクトに応募するだけではなくて、プロジェクトを断わる権利も合わせて付与しています。

movin:

拒否権ですね(笑)。

針ヶ谷様:

なぜこういうものを採っているかというと、OJTが先ほど申し上げたように非常に重要なもので、どのプロジェクトに入っていくかはキャリア形成上とても大切になります。ですので、同じテーマに入り続けたくないといった様な意見も聞いていった方が良い、という声を反映しています。一方で完全な公募制にすると、完全に自由市場化し、特定のコンサルタントの希望が通りやすいという面も出てくる可能性が有ります。

movin:

なるほど。

針ヶ谷様:

そうすると、今度は逆に育成面でそれがネックになってしまうことがあるので、配慮をしています。コンサルタントに誰かひとりシニアな人間がつくというメンター制度をとっていますが、メンターは常に自分のメンティーが次にどういうプロジェクトに入るべきかということを公募の場にあげることになっています。その声を配慮しながらチームを組むようにしています。したがってあるプロジェクトに人気が集中したので、良い人だけを採るというのではなくて、「この人は育成を考えるとこういうプロジェクトに入れたい」とかあるいは「入れてあげてほしい」というメンター側からの要望を聞き入れてアサインを決めています。

育児休暇を取ることができるのもこのようなアサインメントの特徴にも関係があります。マネージャー以下であればプロジェクトの単位で稼働が切れているので、休みがとりやすい環境にあります。実際に多くの方が育児休暇を取られていて、短い方で言えば1ヶ月くらいから、過去一番長いケースでは、半年くらい取得をしているケースもあります。個人としては非常に良い制度だと思っています。

movin:

コンサルタントの成長と働きやすさの両立は、上の方からするとかなり大変なんじゃないかなと思うんですが、いかがでしょうか。

針ヶ谷様:

そうですね、確かに大変な面はあります。ただ、例えばですが、10人の人間が同時に育休を取るとういう訳ではなく、現状の我々の規模感であれば育休で休まれる方が、オフィスの中に常にいるという状況は、許容できる状況です。

movin:

余裕が出てきているというところでしょうか。

針ヶ谷様:

恐らくは。また、コンサルタントの仕事の特徴もあると思います。普通の事業会社で1、2ヶ月人がいないとそのポジションをだれかが埋めなければならないですが、コンサルタントの場合は必ずしもその必要はありません。これは男性の例ですが、女性の育児休暇も当然あります。女性の育児休暇はより長く取るケースが多いですね。長く取られた後に、復帰してパートタイムや時短で働かれるケースもあります。

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