「税理士はやめとけ」とインターネットやSNS上で言われることがありますが、すべてが的確な意見とは限りません。しかし、実際にそう言われる背景には、税理士業界特有の課題や現実があります。
ここでは、代表的な5つの理由を紹介します。

税理士になるためには、国家試験に合格する必要があります。この試験は合格率が非常に低く、5科目合格するまでに平均7?10年かかる人も多いと言われています。特に働きながら合格を目指す社会人にとっては、学習との両立が大きな壁になります。
【参考】税理士試験（2023年度）の全体合格率：約18%
※科目別では10?20%前後。5科目合格まで到達する人はさらに少数。

「税理士は稼げる」と思われがちですが、資格を取ったからといってすぐに高収入が得られるわけではありません。勤務税理士として事務所で働いた場合、年収は300?500万円台にとどまるケースも多いのが現実です。
開業すれば収入は青天井ですが、逆に集客や営業のスキルが求められ、リスクも伴います。

近年、クラウド会計ソフトやAIによる自動化が進行しており、「税理士の仕事がなくなるのでは？」と心配する声もあります。
特に、記帳代行や単純な申告業務は自動化の対象になりやすく、こうした業務に依存している税理士事務所は厳しい立場に立たされることも。

税理士の登録者数は全国で約8万人（2023年時点）おり、特に都市部では競争が激化しています。
新規顧客を獲得するためには、他事務所との差別化やマーケティング、専門性の確立が不可欠です。
独立＝成功とは限らず、営業に不慣れな税理士が経営難に陥ることも。

税理士の仕事は「数字を扱う専門職」というイメージがありますが、実際には対人スキルも非常に重要です。
クライアントとの信頼関係構築や、経営者の不安に寄り添うコミュニケーション力が求められ、人間関係に疲弊して離職するケースもあります。

インターネット上では「税理士はやめとけ」といったネガティブな声も目立ちますが、実際に働いている人たちの声を聞くと、その印象は一面的ではないことが分かります。
ここでは、現役税理士や試験合格者などのリアルな声をもとに、やりがいや大変さの両面を紹介します。

税理士の仕事には多くのやりがいがあります。特に多くの声として挙がるのは以下のようなポイントです。

・経営者の「お金の悩み」を数字でサポートできる喜び
・顧問先との信頼関係が築けたときの達成感
・税務・会計だけでなく、経営全体に関わる面白さ
・自分のスキルでお客様の事業が良くなっていく実感

現役税理士の声
「ただ申告書を作るだけじゃなく、経営者の意思決定に関われるのがこの仕事の醍醐味です」
「数字の裏にある人の想いや不安を理解することも含めて、やりがいがあります」

一方で、「税理士になったけど後悔している」と話す人の中には、いくつかの共通点が見られます。 ・想像以上に試験が大変で途中で挫折した
・資格取得後も収入が思ったより伸びなかった
・事務作業が多く、思っていたほどクリエイティブな仕事ではなかった
・営業・集客のプレッシャーがきつかった（独立後） 元税理士受験生の声
「努力すれば報われると思っていたけど、合格するまでに10年かかり心が折れました」
「開業したけど、営業や人脈作りが苦手で継続できませんでした」

一方で、順調に活躍している税理士には以下のような特徴があります。

・継続的な学び・情報収集を怠らない
・顧客対応力が高く、信頼関係を築ける
・マーケティングやSNSなどを活用して顧客開拓している
・税務以外にも経営、相続、M&Aなど幅広い分野に強みを持っている 成功している若手税理士の声
「SNSで情報発信しながら、顧問契約につなげています。会計だけじゃなく『人』を見てもらう時代です」
「税理士資格はゴールじゃなくて、ようやくスタートライン。そこからどう動くかが大事ですね」

「税理士はやめとけ」と言われる一方で、やりがいを感じて活躍している人が多いのも事実です。
その違いは、仕事に対する向き合い方や、自分の強みをどう活かすかにあります。

「税理士はやめとけ」と言われる理由や、実際の声を踏まえても、最終的には「自分に合っているかどうか」が一番重要です。
ここでは、税理士を目指す前に考えるべき3つの視点をご紹介します。

税理士という職業には、向き・不向きがあるのも事実です。以下のような性格・価値観を持つ人は、税理士に向いている傾向があります。 向いている人の特徴
・コツコツと努力を継続できる
・数字や論理的思考が得意
・専門性を深めるのが好き
・相手の話を丁寧に聞き、信頼関係を築ける
・地道な仕事でも価値を見いだせる

逆に、「変化の激しい環境で自由に働きたい」「人と関わらずに完結する仕事がしたい」という人には、やや不向きかもしれません。

税理士試験の合格までに数年?10年ほどかかることもあるため、自分のライフプランと学習期間が合っているかも重要です。

・社会人で働きながら資格取得を目指す場合、時間・体力・精神的余裕の確保が必要
・30代・40代でのチャレンジの場合、合格後のキャリア設計（独立・転職）を明確にすることが重要
・資格取得後のビジョン（独立したい／事務所で働きたい／企業内税理士になりたい）を持っておくとブレにくい

資格をゴールにせず、「資格取得後にどう働きたいか」を先に描いておくことで、途中での迷いや後悔を減らすことができます。

税理士以外にも、「士業」と呼ばれる国家資格は多数あります。中でも以下はよく比較されます。

税理士を目指す場合も、自分の興味関心やキャリア戦略に合った選択が重要です。
税理士になるべきか迷ったときは、試験の難易度や業界の現状だけでなく、「自分自身に合っているか？」という視点で判断することが大切です。
向き合い方次第で、大きなやりがいと専門性を持って活躍できる職業であることは間違いありません。

「税理士はやめとけ」という声がある一方で、実際には今も多くの人が税理士を目指し、活躍しています。
ここでは、税理士という職業のポジティブな側面と、今後の可能性について紹介します。

税理士の仕事は、単に「申告書を作成する」だけではありません。近年は、次のような領域にも活躍の場が広がっています。
経営コンサルティング：経営計画、資金繰り改善、売上アップ支援など、数字を活かした提案が可能。
相続・事業承継の専門家：相続税対策や事業承継の相談ニーズは年々増加傾向にあります。
M&Aや企業再編支援：財務・税務の専門知識を活かし、M&Aのアドバイザリーとして活躍する税理士も。

このように、「税務の枠を超えた総合支援者」としての価値が高まっているのです。

クラウド会計やAIの進化は、税理士の仕事の「代替」だけではありません。うまく活用することで、業務の効率化と付加価値の創出が可能になります。
・クラウド会計ソフトによる業務自動化で時間を削減
・RPA（業務自動化ツール）による繰り返し作業の削減
・データ分析に基づいた経営支援の提供

>補足：会計ソフトfreeeやマネーフォワードなど、クラウドツールを活用できる税理士は中小企業経営者からの需要が高まっています。

税理士としての将来性を高めていくには、「税務知識＋α」の視点が重要です。たとえば、
・コミュニケーション力・提案力
・業種特化（医療・建設・ITなど）
・WebマーケティングやSNSでの発信
・経営・資金調達・補助金の知識

税務の知識はあくまでベース。「何ができる税理士か？」という差別化が、今後の成長を左右します。
税理士は、時代とともに役割が変わりつつある専門職です。
「やめとけ」と言われる背景には課題もありますが、視点を変えれば、専門性と信頼を武器に長く活躍できる職業とも言えます。