簿記1級の取得者は年収いくら?実際のデータと年収アップの方法を解説
簿記1級とは?難易度や取得メリットの概要
簿記1級とは?
簿記1級は、日本商工会議所が主催する日商簿記検定試験の最上位級に位置付けられ、経理・財務・会計分野の専門性が非常に高い資格です。企業の財務諸表を深く理解・分析し、経営判断に関わる業務まで対応できるレベルが求められます。
難易度と合格率
簿記1級の試験は、主に以下の4科目から構成されています:
商業簿記
会計学
工業簿記
原価計算
試験時間は合計3時間30分と長丁場で、計算力・理論理解ともに高い水準が求められます。
直近の合格率は約8?12%前後と非常に低く、難関資格とされています。
【参考】令和6年度 第167回試験の合格率:9.2%(出典:日本商工会議所)
簿記1級の取得メリット
以下のような点が、簿記1級の主なメリットとして挙げられます:
転職・就職での高評価:経理職や財務職などの専門職で評価されやすく、求人票に「簿記1級歓迎」と記載されていることもあります。
年収アップの可能性:特に上場企業や大手企業で、給与レンジが上がるケースがあります。
会計士・税理士の足がかりに:簿記1級の知識は、税理士試験(簿記論・財務諸表論)や会計士試験の基礎にも直結します。
独立やフリーランスにも活かせる:決算業務や会計コンサル、記帳代行など、独立後も活用できるスキルです。
簿記1級取得者の平均年収はどれくらい?【最新データ付き】
簿記1級保有者の平均年収
簿記1級取得者の平均年収は、職種や勤め先の規模によって大きく異なりますが、一般的な相場は以下の通りです。
勤務先の規模・職種 | 年収の目安 |
中小企業の経理担当 | 約350万円?450万円 |
上場企業の経理・財務職 | 約500万円?700万円 |
経理マネージャー・部長クラス | 約700万円?900万円 |
税理士事務所や監査法人(補助) | 約400万円?600万円 |
経験豊富な転職者(30代?40代) | 600万円以上も可能 |
【参考】doda、マイナビエージェント、リクナビNEXTなど複数の求人情報・統計を元に編集(2025年時点)
年収は「簿記1級+実務経験」で大きく変わる
簿記1級の資格自体は評価されますが、年収を大きく左右するのは実務経験と企業規模です。
特に以下のような実績があると、高年収の求人にも応募可能になります:
・月次・年次決算を一人で回せる
・税務申告や予算管理などに携わった経験
・監査対応・IFRSなど高度な会計処理の経験
このため、「簿記1級+〇〇の経験」があるかどうかが、500万円以上の年収を実現するカギとなります。
簿記1級だけでは年収400万円前後にとどまるケースも
注意点として、資格を持っているだけで未経験・実務歴が浅い場合は、年収が350万円?400万円前後にとどまるケースもあります。
特に20代の若手や実務未経験者は、まずは経験を積んでキャリアアップしていく形が一般的です。
職種別に見る簿記1級の年収相場(経理・財務・税理士など)
経理職(一般?主任クラス)
年収目安:350万円?550万円
業務内容:仕訳・伝票処理、月次・年次決算、支払処理など
コメント:中小企業では400万円前後、大企業では500万円超えも可能。決算対応ができる人材は重宝される。
経理職(マネージャー・管理職)
年収目安:600万円?900万円
業務内容:チーム管理、連結決算、税務調整、予算策定、監査対応など
コメント:簿記1級に加えてマネジメント経験があると、年収アップに直結。上場企業や外資系での評価も高い。
財務職
年収目安:500万円?800万円
業務内容:資金繰り、資金調達、財務戦略、金融機関対応など
コメント:簿記1級に加えて財務知識や経営感覚が求められるが、成長企業では非常に需要が高い。
税理士事務所スタッフ・会計事務所補助
年収目安:400万円?600万円
業務内容:仕訳入力、申告書作成補助、顧客対応など
コメント:未経験でも簿記1級があると優遇されやすい。実務経験を積めば独立も視野に入る。
監査法人スタッフ(会計士補助)
年収目安:500万円?700万円
業務内容:会計監査補助、資料作成、内部統制チェックなど
コメント:公認会計士を目指す学生や実務補助者として簿記1級は有利。パートナー昇格で高収入も可能。
独立・フリーランス(記帳代行・会計コンサル)
年収目安:300万円?1,000万円以上(スキル・営業力次第)
業務内容:記帳、決算サポート、財務アドバイス、クラウド会計導入支援など
コメント:安定性は低いが、複数企業と契約すれば高収入も可能。特にクラウド会計スキルやIT知識があると強い。
簿記1級と他の級(2級・3級)の年収差は?
各級ごとの平均年収の目安
簿記検定には1級・2級・3級の3つのレベルがありますが、年収面での差は資格の活かし方や業務範囲によって大きく変わります。ここでは、各級別の年収相場と、実務での役割の違いを解説します。
資格 | 年収の目安 | 業務レベル |
簿記3級 | 250万?350万円 | 簡単な仕訳入力、日常の出納管理など |
簿記2級 | 300万?450万円 | 決算補助、固定資産管理、税務補助など |
簿記1級 | 400万?700万円以上 | 月次・年次決算、財務諸表分析、監査対応など |
【参考】マイナビ転職・doda求人掲載情報より算出(2025年時点)
なぜ簿記1級は年収が高くなるのか?
簿記1級が高年収につながる理由は、主に以下の3点です:
・対応できる業務範囲が広い
1級では、単なる経理作業だけでなく、財務戦略や税務調整、会計監査への対応など、より上流の業務を任されることが多くなります。
・管理職候補として評価されやすい
1級取得者は将来的に経理部門のマネージャーやCFO候補としてのポテンシャルがあると見られ、企業側も投資対象として高待遇を提示する傾向があります。
・専門性が高く希少性がある
合格率10%以下の難関資格であるため、「知識・論理思考力・継続力」の証明として強く評価されます。
ただし、資格だけで年収が上がるわけではない
注意点として、資格取得だけで年収が劇的に上がるわけではないという点は押さえておく必要があります。
簿記2級でも実務経験が豊富であれば、年収500万円以上のケースもあります。
逆に、簿記1級を持っていても未経験だと300?400万円台にとどまることもあります。
そのため年収を上げるには「資格×実務経験×職種選び」が重要!
年収アップに繋がる簿記1級の活かし方・アピール方法
@ 実務経験を積み、「即戦力」であることを示す
年収を上げるうえで最も効果的なのは、「すぐに仕事ができる人材」として見せることです。
簿記1級に加えて、以下のような経験を持っていると高評価されます:
・月次・四半期・年次決算の主担当
・税務申告書作成や税理士との折衝経験
・原価計算、管理会計、部門別損益管理
・会計ソフトの導入・改善経験(例:freee、弥生、SAPなど)
企業は「資格+業務改善経験」のセットを高く評価します。
A 業界や職種を選び直して収入レンジを引き上げる
簿記1級を活かせる業界は多岐に渡りますが、年収レンジの高い業界や職種にチャレンジすることが収入アップの近道です。
業界・職種 | 特徴・年収傾向 |
上場企業の経理・財務 | 管理会計・連結決算などで年収600万円以上も |
コンサルティングファーム | 経営数値分析で活用。年収700万円?も可能 |
外資系企業 | IFRSや英語対応が求められるが高年収傾向 |
税理士法人・監査法人 | 実務経験を積みながら高単価で成長できる |
B 資格+αのスキルで市場価値を上げる
簿記1級に加えて、次のようなスキルや資格を持っていると、企業からの評価が格段に高まります:
スキル・資格 | 効果 |
税理士試験の科目合格 | 税務の専門性を証明し、年収UPに直結 |
英語力(TOEIC 700点以上) | 外資系企業や国際会計対応で有利 |
Excel VBAやマクロ | 経理業務の自動化に貢献できると評価されやすい |
会計ソフトの操作経験 | 実務での即戦力として重宝される |
C 転職活動では「何ができるか」を言語化する
面接や履歴書では、ただ「簿記1級を持っています」と伝えるだけでなく、以下のように実績ベースで伝えることが効果的です。
例:
「月次決算を5営業日以内に締める体制を構築し、部門別PLの自動集計を実現しました」
「管理会計レポートを独自に構築し、経営会議資料の作成時間を30%削減しました」
D 年収アップに強い転職エージェントを活用する
簿記1級保有者に特化した求人は、一般の転職サイトでは見つかりにくいケースもあります。ハイクラスや会計系専門エージェントを活用することで、より高年収の求人に出会える可能性が高まります。
簿記1級を活かせる転職先・企業の特徴とは?
上場企業・大手企業の経理・財務部門
求人傾向:連結決算、IFRS対応、予算管理、開示業務など
年収目安:500万?800万円
特徴:専門性が高く、チーム体制が整っているため、簿記1級の知識がそのまま活かされる。特に決算スピード・正確性・報告資料作成などで即戦力が求められる。
会計事務所・税理士法人
求人傾向:仕訳入力、申告書作成補助、巡回監査、相続・法人税対応など
年収目安:400万?600万円(科目合格者ならさらに上も)
特徴:クライアント数が多く、幅広い業種の帳簿や税務を経験できる。実務力を高めて独立を目指す道も。
ベンチャー・成長企業の管理部門
求人傾向:経理1人目、体制構築、業務改善、IPO準備など
年収目安:450万?700万円
特徴:「何でもできる人材」が歓迎される傾向にあり、資格+自走力が活かせる。スピード感ある業務環境で、柔軟に働ける場合も多い。
外資系企業やグローバル企業
求人傾向:英文会計、レポーティング、IFRS基準、グループ会社管理など
年収目安:600万?900万円以上(英語力があればさらに高待遇も)
特徴:IFRSやUS-GAAPに対応できる人材が重宝される。簿記1級に加え、英語力があると大きな武器になる。
公認会計士・税理士を目指す実務経験の場として
対象:資格取得のステップとして簿記1級を取った人
特徴:監査法人や税理士法人での補助業務で経験を積み、将来の独立や高年収資格者を目指すケースも多い。学習意欲が評価されやすい傾向にある。
フリーランス・独立開業という選択肢も
業務内容:記帳代行、クラウド会計導入支援、財務アドバイザーなど
年収目安:300万円?1,000万円以上(営業力・案件数次第)
特徴:自由度は高いが、収入は不安定になりがち。副業から始める人も多い。
簿記1級を評価する企業の共通点
・正確な数字に基づいた経営を重視している企業
・決算の早期化・会計レベルの向上を図っている企業
・IPO準備・M&A・グループ経営など会計処理が複雑な企業
こうした企業では、簿記1級保有者は「現場で使える数字のプロ」として重宝される傾向にあります。
まとめ:簿記1級は年収アップの武器になるか?
簿記1級は評価される資格だが「使い方」がカギ
結論として、簿記1級は年収アップの有力な武器になり得ます。ただし、「資格を取っただけ」では不十分であり、実務経験・職種選び・スキルの掛け合わせが重要です。
・合格率10%前後の難関資格であり、専門性の証明としては非常に価値が高い
・上場企業・外資系・会計事務所など、多様な職場で評価されやすい
・実務経験や関連スキルと組み合わせることで、年収600万円以上も十分に狙える
年収アップのためのポイント
・即戦力としての実務経験を積む(決算、原価計算、税務など)
・年収の高い業界・企業を狙う(上場企業、コンサル、外資系など)
・簿記1級+αのスキルを習得する(英語力、税理士科目、ITスキルなど)
・自分の強みを言語化してアピールする(履歴書・面接対策が重要)
簿記1級を活かして収入とキャリアを伸ばすには
「資格を取ったら終わり」ではなく、取ってからが本当のスタートです。
実務経験やスキルアップを継続しながら、より高いレベルの職種にチャレンジしていくことで、確実にキャリアと年収は上がっていきます。
転職を検討中という方は、弊社ムービンまでお気軽にご相談ください!