コンサル、金融・不動産専門職の採用トレンド[09年12月潤オ]
企業の経営課題を解決するコンサルタント。金融・不動産分野に精通した専門職。これら「スペシャリスト」と呼ばれる職種の求人動向は、今どのようになっているのだろう?専門家に、現在の転職市場動向と求められているスキル、そして今後の見通しを解説してもらった。
2009年11月25日

ADVISER
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業務改善、再生系の案件増加でコンサルタント需要は底堅い
<コンサルタント全般>
もともと求人の絶対数は多くはないが、ほかの業界に比べて不況の波に比較的左右されにくいのが、コンサルティング業界の人材ニーズ。コンサルティング案件のテーマは時代によって変わるものの、ニーズ自体は継続的に存在するためだ。「例えば戦略系コンサルティングファームの受注案件でいえば、好景気のときは売り上げを伸ばすための成長戦略案件がメインですが、現在はコストカットや業務改善系の案件が増えています。財務系のコンサルティングファームでも同様に、企業再生やM&Aなどのテーマが目立ちますね」(神川氏)。
また、一部戦略系ファームでは、需要が見込まれるヘルスケアや、メディアなど未開拓の成長領域に進出しようという動きがある。そのため、現有のコンサルタントではなく、対象マーケットにいた人材が注目されている。「同分野で中期経営計画を策定した経験のある人や、M&Aを手掛けていた人など、経営の中枢に近い立場にいた人が注目されています」(中川氏)。
この流れは向こう数カ月続くとみられ、「採用トレンドは他業界に比べれば引き続き堅調」(神川氏)の見通しだ。
そ
の際、評価されるスキルは、資格や語学力よりも、「問題解決能力」。「ロジカルに物事をとらえて現状を整理し、どういう問題が起きていて何が一番の課題か
を、構造化して説明する力が求められる」(神川氏)という。また、成果については数字だけでなく、「成果+プロセス」を重視する傾向にある。「企業は、ど
ういう思考のもとでどんな方法を取り、どれほどの成果を収めたか…が知りたい。数字だけではその人のスキルは測れず、そのプロセスによって『彼のやり方が
再現性のあるものかどうか』を判断するためです」(神川氏)。
銀行、生保でリテール営業需要拡大、金融業界経験者に注目
<金融・不動産専門職>
金融系専門職の分野では、個人金融資産をターゲットにした「リテール営業」の採用が息を吹き返した。「邦銀、外銀、生保でも、採用ニーズは復調傾向。取り組みが早いところはこの夏から動き出しており、今はその他の会社が追従し始めている」(中川氏)といい、これから来年にかけて採用が本格化する可能性がある。なかでも投資信託や外貨預金など、利回りの高いリスク商品を拡販できる人が求められており、必然的に金融業界の営業経験者が優遇さ
れる。「少なくとも、業界経験4潤オ5年以上の人が、即戦力として採用されている」(神川氏)という。半面、投資銀行業務の人材ニーズは、外資系金融からの
人材流出を受けて買い手市場が続いている。日系の生損保では、運用担当者ニーズが顕在化しつつあるものの、経験者のピンポイント採用となっている。
不動産関連は引き続き厳しいが、オフィスビルや公共施設など大型建造物のメンテナンス需要を受けて、技術系職種の採用数が増加。「特に電気施工管理技士の資格保有者には引き合いが多い」(中川)という。また、一部の体力ある大手ディベロッパーでは総合職採用を継続。あえて異業界出身者を採用し、新しい視点を取り入れて事業拡大につなげようという動きがあり、法人取引経験や困難を突破してきた精神的タフさが求められている。
なお、不動産価格下落を受けた買い手の増加、国のJリート対策の本格化などを受けて、「今年度の終わりごろにはこの分野も回復の兆しを見せ、人材需要も回復が期待されます」(中川氏)。