かつて和製SNSとして業界を席巻したミクシィの再起なるか――。6月下旬、SNS大手ミクシィの新体制が本格的にスタートした。“手綱”を握るのは、朝倉祐介社長兼CEOだ。
1982年7月生まれの31歳。競馬養成学校から東大法学部に入学し、コンサルティングファームのマッキンゼーに勤めた後、自身が学生時代に立ち上げたベンチャー企業に出戻ったという、経営者としては異色の経歴を持つ。2011年9月にその会社がミクシィに買収されたことをきっかけで、ミクシィへ入社している。
ミクシィ入社後は、少人数でサービスを運営するユニット制の導入や、新事業立ち上げの仕組み作りに奔走した。その成果を買われ、2012年7月に執行役員経営企画室長に抜擢されている。「このときから、笠原との話し合いの中で、社長は自分になるという雰囲気は醸成されていた」(朝倉氏)。
被買収企業の社長から買収元企業の社長へ。自身の経歴だけでなく、日本では異例づくしの展開で社長に就任した朝倉氏。しかし、その人となりはいわゆる「エリート」という言葉では語り尽くせない。
■他人の尺度でなく、自分の尺度で決める人生を
生まれは兵庫県西宮市。阪神競馬場が実家のすぐそばにあった。「小学生の頃、友達と頻繁に競馬場へ通い、駐車場で野球をして遊んでいた」。あこがれたのは、武豊騎手だ。当時、武騎手は三冠馬のナリタブライアンに騎乗していた絶頂期。だが、競馬騎手を職業に選ぼうとした少年は朝倉氏ぐらいだった。
「単純に競馬騎手がかっこいいというあこがれがあった」と本人は言う。「騎手は自分の腕で食っていくことができる職人的生き方ができる。日本だけにとどまらず、海外でも活躍できる」という魅力があった。
ただ、騎手の道を選んだ理由はそれだけではない。「中学校に進学し、高校受験を控えたとき将来のことに思いを巡らした際、単純にいい学校へ行って、いい大学、会社に入るということがいいのか。自分の尺度ではなく、人の尺度で決めている人生ではないか」と疑問を抱いたことが、この職業を志す決め手となった。
思いついたら即、行動である。資料を取り寄せ、オーストラリアの競馬養成学校に願書をファックスで提出した。両親は当然、反対したが、「若いほうがすぐに方針転換できる」と説き伏せ、中学卒業後、単身でオーストラリアに渡った。
結果的に、朝倉氏はオーストラリアからは1年間で戻ってきている。あまりに身長が伸びすぎたからだ。
競馬騎手が維持しなければいけない体重は45キログラム前後。平均的な身長は160センチメートルが相場という中で、朝倉氏の身長は175センチメートルまで伸びた。「体重を抑えるために、1日1000キロカロリー以下しか摂取しなかった。体脂肪は3%まで下がったが、それでも伸びる身体を止められなかった」という。
■さらなる挫折が転機に
それでも、競馬に関連する職業へ就く夢はあきらめめなかった。調教助手の募集が北海道浦河町にあることを見つけ、オーストラリアから北海道に渡り、名馬メジロマックイーンの子どもなどを担当した。当時16歳、「騎手の道をあきらめたとはいえ、馬のない生活は考えられなかった」。
しかし、ここで不慮の事故に会う。バイクに乗車していた際、浦河町の近く、様似町の道路でカーブの先に止まっていた車と衝突し、左足の大腿骨と下腿骨を両方粉砕骨折したのだ。複雑骨折よりも重傷なケガだった。後遺症は今でも残っている。
「一度、大学に行ったほうがいいかもしれない」。浦河町で調教助手をし始めた頃、漠然と抱いていた思いが、この事故によって鮮明になる。朝倉氏は1年半ぶりに実家の兵庫県西宮市に戻る。
そこからは、大学受験資格をもらえる専門学校に3年間通った。「北大の獣医学部に行きたかったが、数学が苦手なのであきらめた。東大にどうしても入りたいわけではなかったが、もともと、勉強はそれなりに得意だった」とさらりと言う。
当時、大学入学直後は「焦燥感が強かった」という。9割方が現役で入学する東大の中で、朝倉氏は入学時点で20歳。実質2浪という立場だったことが、逆に行動を起こす際の原動力になった。
最も精を入れたのは課外活動だ。「京論壇」という東大と中国・北京大の学生によって結成された国際学生討論団体での活動や、政治家のかばん持ちまでこなした。起業も2回経験している。そのひとつが、のちにミクシィに買収されることになる、ネイキッドテクノロジーという会社だ。
■マッキンゼーから再びベンチャー企業へ
大学卒業後、朝倉氏は自身が立ち上げたネイキッドから離れ、マッキンゼーに入社している。狙いは「一度、マネジメントの基礎を学びたかったから」だ。マッキンゼーには3年4カ月勤務し、その後、ネイキッドに舞い戻っている。本人によれば、「当時は(ネイキッドが)資金調達ができる人を探していたため、メンバーから声がかかった」という。
ただ、朝倉氏とマッキンゼーの新卒同期で、現在、スポットライト社長を務める柴田陽氏は別の見方をする。「当時のネイキッドはビジネスがうまくいかず、そうとうしんどかったはず。立て直しのために朝倉君の力が必要とされていた」。朝倉氏もミクシィへの株式売却が決まったときは「渡りに船」の心境で、厳しい経営状況だったことを認めている。
2007年4月から、ミクシィへの株式売却まで出資をしていたベンチャーキャピタルのアーキタイプ中嶋淳社長も「一度、朝倉君が抜けたとき、メンバーもすんなり受け入れている。彼がメンバーとの信頼関係を作っていたことが、ミクシィへの株式売却までこぎ着けるポイントとなった」と、周囲との関係作りにおいて、朝倉氏の評価は高い。
結果的にネイキッドはミクシィグループの傘下に入った後、わずか半年ほどで再び売却されている。つまりミクシィは、ネイキッドの事業を使いこなせなかった。ただし、ミクシィはネイキッドを買収したことで、朝倉氏という人材を手に入れた。
米国シリコンバレーで主流になりつつある「アクハイヤー」(買収と採用を組み合わせた造語)を早くも体現していた事例と言えるだろう。
■ミクシィをどう立て直すのか
株式関係者が熱狂した2006年9月の上場からおよそ7年。ミクシィの株価は当時の10分の1に沈み、同じSNSではゲームに舵を切ったディー・エヌ・エー、グリーに引き離された。SNS同士でも、国内会員数は海外勢のフェイスブックやツイッターの後塵を拝している。
このような状況を打破するため、朝倉氏率いる新生ミクシィは、「SNSサービスの『ミクシィ』以外のサービスを作る」ことを目指す。新しいサービスはミクシィブランドを冠さないこともいとわない。重点領域は、市場の成長が著しいスマートフォンアプリだ。2012年度末にたった2本だったアプリの本数を、13年度末に50本にまで引き上げる計画だ。
売り上げ規模が年間100億円強に対し、約50億円もの資金を本体と一体で運用する投資子会社を7月1日に設立。「成長のためにありとあらゆる手段を使う。この投資子会社は非連続的な成長を進めるうえで、最も大きな役割を果たす」と意気込む。
自身の社長就任と同時に、経営陣も刷新された。2000年の創業以来社長を務めた笠原健治氏は、代表権のない取締役会長として一歩退いた。一方、朝倉氏を含め新任取締役は3人誕生。そのうちCOOに就く川崎裕一氏は、はてなで副社長を務めた実力者だ。
「スマホアプリの時代は、個人の開発者がヒットサービスを生み出せるというメリットがある。一方で、ミクシィがアプリを運営することで、まだまだ信頼感を持ってもらえるはず。ネットがスマホ中心のパラダイムに移行する中、過去の成功体験を断ち切り、改革を行っていく」
一度輝きを失ってしまった、国産SNS企業の再生を託された朝倉氏。競馬騎手の夢は道半ばにして断たれたが、今度は会社経営というGIレースで、一大勝負へ挑む。
2013年 7月26日
東洋経済オンライン
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