同レポートは、IBMのネットワーク・セキュリティー運用監視サービス「Managed Network Security Services(MNSS)」を提供する世界10拠点のIBMセキュリティー・オペレーション・センター(SOC)において観測した、2013年上半期(1〜6月期)のインターネット・セキュリティー情報に基づくもの。
IBM SOCでは、過去10年以上にわたって蓄積したセキュリティー・インテリジェンスを相関分析エンジン「X-Force Protection System」に取り込み、1日あたり約200億件(毎秒約23万件)のログをリアルタイムで相関分析を行っている。Tokyo SOCレポートは、この解析結果を日本国内の動向にフォーカスして独自の見解を加え、半年ごとに公表して、顧客をはじめとする国内企業にセキュリティ上の注意喚起を行っている。
インターネット・セキュリティ分野で顕著な3つの傾向
発表同日、日本IBMは報道関係者を集めて説明を行った、同社 グローバル・テクノロジー・サービス事業 ITSデリバリー ユーザー&コミュニケーションサービス セキュリティ・サービス担当部長の徳田敏文氏は、同レポートで顕著な動向として、(1)ドライブ・バイ・ダウンロード攻撃の急増、(2)SSH・FTPサーバーへの辞書/総当たり攻撃の65%以上が中国のIPアドレスから、(3)標的型メール攻撃の“見えない化”が進行」の3つを挙げ、それぞれについて説明した。
まず、(1)について、最新レポートでは、国内における今期のドライブ・バイ・ダウンロード攻撃の検知数が3972件と前期比で約4倍の伸びを示し、特に2013年1〜3月の3ヶ月間は、これまでにない急増であったことを示している。ドライブ・バイ・ダウンロード攻撃とは、Webサイトを改竄し、そこにアクセスしてきたクライアントPCをマルウェアに感染させるという攻撃手法のこと。
急増の背景として徳田氏は、「攻撃者が仕掛けるドライブ・バイ・ダウンロード攻撃の最初のステップであるWebサイトの改竄が予想以上に成功している」ことを指摘。レポートによると、このタイプの攻撃は、アプリケーション開発フレームワークなどのミドルウェアの脆弱性が悪用されるパターンがほどんどで、なかでもJRE(Oracle Java Runtime Environment)の脆弱性を悪用した攻撃が全体の80.4%を占めるという。
「ドライブ・バイ・ダウンロード攻撃の成功率は13.2%で、この数字を高いとみるか低いとみるか。組織内で10台に1台以上のPCが被害に遭っている計算になり、私達は、この成功率を必ずしも低いとはとらえていない。今日、セキュリティ・インシデントと言うと、標的型メールや(Anonymousのような)ハッカー集団の攻撃に目が行きがちだが、ここで基本に立ち返って、パッチ適用管理などの見直しが必要である」
続いて、(2)の辞書/総当たり攻撃とは、ツールを使って攻撃対象へのログイン試行を自動的に繰り返すことで正規のログインID/パスワードの組み合わせを探り当てる攻撃手法のことである。Tokyo SOCは、とりわけSSHとFTPサービスを対象にした攻撃状況に着目。レポートによると、送信元IPアドレスは中国の割り当てレンジのものが65%以上と最多で、続いて米国(5.8%)、韓国(5.0%)となっている。
徳田氏は、例えば、攻撃対象のサイトが「example.jp」の場合に「example」や「examplejp」といった、類推を容易に行える安易なログインIDにしてしまうことや、機器のマニュアルに記載されている出荷時のデフォルトパスワードのままで運用してしまうことといったミスが狙われていると指摘した。
(3)の“見えない化”とは、ある特定の組織や個人に対し執拗に攻撃目的のメールを送信する標的型メールの攻撃件数そのものは減少していないが、暗号化、匿名化といった攻撃検知を回避するための技術が進化し、検知件数に減少傾向が見られる状態を指している。求められる対策として、徳田氏は、「明確な攻撃を発見・防御する従来のアプローチに加えて、セキュリティ機器で詳細なログを取得し、それに対してリアルタイムに相関分析を行うことで、攻撃の痕跡を発見し迅速に事後策をとる出口対策のアプローチが必要になってくる」と説明した。
なお、今回発表されたTokyo SOCレポートの全文は日本IBMのWebサイトで入手することができる。
2013年 8月28日
IT Leaders
日本IBM
米IBMのビジネスコンサルティング部門の日本法人。以前の社名は、IBMビジネスコンサルティングサービス株式会社 (IBCS)だったが2010年4月1日に日本アイ・ビー・エム株式会社と経営統合し、現在は同社グローバル・ビジネス・サービス事業コンサルティングサービスとなっている。前身は米PwC Consultingの日本法人(PwCコンサルティング株式会社)。2002年にPwC ConsultingがIBMに買収され、各国における事業が法人レベルで統合された後も、日本市場においてのみは別法人として存続し続け、もう一つの日本法人である日本アイ・ビー・エム株式会社と協業を行っていた。コンサルティングサービスにかかわる豊富な実績を基盤に、世界のIBMグループと密接な連携をとりグローバルベースでの連携し、分断されたサービスではなく、ビジネスコンサルティングからシステム構築、業務アウトソーシングまで一貫したサービスをグループとして提供している。
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