【みずほ総合研究所】安倍首相：高速鉄道の輸出、インドで巻き返しへ−12日に首脳会談

安倍晋三首相は12日に予定されているインドのモディ首相と首脳会談で、同国の高速鉄道計画への日本の新幹線技術の採用を取り付けたい考えだ。インドネシアの計画では中国に競り負けており、インドで巻き返しを図る。日本の新幹線技術の輸出は、成功すれば台湾に続き２例目となる。安倍首相は11日から13日までの日程でインドを訪問する。
柴山昌彦首相補佐官は９日の取材で、仮にインドが日本の新幹線方式を採用すれば、「双方にとってプラスの効果をもたらす」と述べ、期待感を示した。アデレード大学のプルネンドラ・ジェイン教授も、インドネシアで中国に敗北した日本はインドでは確実に受注したいと考えている、との見方だ。
安倍首相とインドのシン前首相は2013年５月の首脳会談で、ムンバイからアーメダバードまでの区間における高速鉄道システムの共同調査を行うことで合意。15年７月には日本の新幹線が持つ技術を推奨する最終報告書をまとめた。17年に着工、23年に完成予定で、総事業費は9800億ルピー（約１兆8000億円）を見込む。
安倍政権はインフラ輸出を成長戦略の柱に据えており、20年に約30兆円のインフラシステムを受注する目標を掲げる。現状では、海外で日本の新幹線方式が採用されているのは07年に開業した台湾のみ。中国と受注を競っていたインドネシアは15年10月、中国案を採用した。安倍首相は11月22日、インドネシアのジョコ大統領と会談し、同国の高速鉄道事業に日本の新幹線方式が採用されなかったことについて、失望している、と伝えた。
日印関係
外務省の資料によると、日印間の14年度の貿易総額は約１兆6000億円。日中の約32兆5800億円に比べると、経済関係は限定的だ。国別でインドの占める割合は１％と23位。１位は中国の20.3％で、13.1％の米国が続く。　
モディ首相が14年に訪日した際、安倍首相は自ら京都を案内。今回の安倍首相の訪印では、モディ首相がインドの古都ヴァラナシを案内する予定だ。さらに、安倍首相がツイッターの公式アカウントでフォローしている首脳は、米国のオバマ大統領、イギリスのキャメロン首相、モディ首相の３人。モディ首相も14年の初訪日を前に日本語で「私が特に心待ちにしているのは、安倍首相にお会いすることだ」とツイッターに投稿しており、日印首脳は良好な関係にある。
ロンドン大学キングスカレッジのハーシュ・パント教授は、安倍首相とモディ首相は国際情勢をめぐる考え方が似ていることなどから、現在の日印関係は今まででおそらく１番良い状態だと指摘。両首脳は共に愛国心が強く、中道右派的で、中国の台頭とそれが及ぼす自国への影響についての認識を共有している、と説明した。
新幹線
みずほ総合研究所の小林公司上席主任研究員は、新幹線は「日本にとって産業面での象徴的な存在」と説明。仮にインドで採用されれば、「国民受けもいいだろう。特に、インドネシアで中国に競り負けた後だから、政権にとっては大きなお土産となる」と語った。
小林氏は、インドでは土地の利権関係が複雑なために土地収用が難しいことなどを挙げ、仮に採用されたとしても、「実際にプロジェクトを実行していく上で困難が出てこないか危惧している」と話した。
首脳会談では高速鉄道計画のほか、防衛装備協力の推進や海上安全保障協力の強化、原子力協力などを話し合う予定。安倍首相は11日、今回のインド訪問に関して「高速鉄道、安保協力、原子力平和利用協定などの分野において今後の日印関係を発展させていくような大きな弾みとなる、そういう成果を目指していきたい」と記者団に語った。ＮＨＫが首相の発言場面を放映した。

2015年 12月11日
Bloomberg.co.jp

みずほ総合研究所
みずほグループのシンクタンク。コンサルティング領域では、経営コンサルティングのみならず、年金コンサルティングや研修プログラムの提供等も行っており、幅広いソリューションを提供。興銀調査部のルーツもあり、経済市場のレポート作成等のリサーチ業務も行っている。

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