長崎スタジアムシティがスポーツで生み出す地域のつながりと社会的価値EYストラテジー・アンド・コンサルティング　プロジェクト事例

EYストラテジー・アンド・コンサルティング　Webサイト引用
https://www.ey.com/ja_jp/insights/government-public-sector/what-is-the-new-regional-revitalization-that-japanet-envisions-with-nagasaki-stadium-city

長崎市の中心地に誕生した「長崎スタジアムシティ」は、サッカースタジアムを核とした複合開発プロジェクトとして、地域創生とエンターテインメントの融合を図った画期的な事例である。約1,000億円の事業費を投じて進められたこの取り組みは、株式会社ジャパネットホールディングスが主導し、その中核を担ったのがグループ会社である株式会社リージョナルクリエーション長崎である。

プロジェクトの契機となったのは、2017年に経営難に陥っていたプロサッカークラブ「V・ファーレン長崎」をジャパネットがグループ会社化したことだった。同年、三菱重工長崎造船所の跡地利用の構想が浮上し、スタジアムを核とした街づくりのビジョンが本格的に描かれるようになる。代表取締役社長・�眦聴或融瓩痢崔�も見たことのない街を長崎の真ん中につくる」という構想のもと、スポーツと地域をつなぐ新たな試みが動き出した。

2024年10月に開業した「長崎スタジアムシティ」は、2万人規模のサッカースタジアムに加え、アリーナ、ホテル、商業施設、オフィスなどを備えた“複合都市”として形成されている。約80の店舗が立ち並び、年間を通じて賑わいを創出することが期待されている。

ドリームキラーに打ち勝つ民間の情熱
本プロジェクトは、立ち上げ当初から地域や外部からの懐疑的な声にも直面していた。「地方都市でこのモデルは成立しない」という意見も少なくなかったが、それらに対し、関係者たちは“スポーツの力”と“民間の柔軟性”を信じて取り組み続けた。ジャパネットグループの年間テーマにも「ドリームキラーに勝つ」が掲げられ、困難を乗り越えて実現にこぎつけた背景がある。

ICTによる施設運用の最適化と価値創出
プロジェクトのもう一つの鍵となったのがICT活用である。施設の複雑な運営を効率化・省人化するためには、デジタル技術の活用が不可欠だった。この領域で伴走したのがEYストラテジー・アンド・コンサルティング株式会社であり、PMOとしてプロジェクトの初期段階から関与している。

ICT導入においては、単なるシステム構築ではなく、長崎スタジアムシティ全体でどのような体験価値を提供するかというビジョン設計からスタートしており、その方針に基づいて一貫したサービス設計が行われた。来場者体験を一つのアプリに集約することで、利用者の利便性を最大限に高め、すでに登録者数は35万人を突破している（2024年8月時点）。また、混雑予測やシフト管理の可視化にもICTが活用されており、運営効率の向上に寄与している。

さらに、大規模発注時の交渉においても、EYが中立的立場で介入することで、クライアントと業者の間での信頼関係を損なうことなく合意形成を実現している。

「長崎モデル」が目指す持続可能な地域価値
長崎スタジアムシティの意義は、単なる地域の活性化にとどまらない。10年、20年先まで持続可能な社会的・経済的価値を提供し続けることを目指しており、その成果は他地域への展開可能性をも示唆している。人口約40万人の商圏に大胆な投資を行ったこの事例が成功すれば、日本全国の他都市でも応用可能なモデルになるという強い信念がある。

ジャパネットとEYが4年間にわたり企業の枠を超えて共創してきたこのプロジェクトは、今後、スポーツを軸にした地域創生の代表例として広く注目されていくと見られる。