人と話題 アクセンチュア 長部亨シニア・プリンシバル

"化学業界でも注目が集まる""ＩｏＴ""
新たな事業形態の普及に挑む
顧客の要望を叶えるツールに
　モノのインターネット「ＩｏＴ」に関する話題が盛んだ。２０１４?15年は""ＩｏＴ元年""と呼ばれ、化学業界でも農薬分野などで注目が集まっている。その普及に向けた取り組みを進めているのがアクセンチュアの長部亨デジタルコンサルティング本部シニア・プリンシパルだ。
ＩｏＴで何ができるか。日本でも現場の「カイゼン」に、電子タグによる物流整理、センサーによる設備監視の導入が進むものの、ＩｏＴの恩恵は社内での活用にとどまらない。「社外との連携で従来不可能だったことを行う、新しい事業の形が生まれている」。化学業界も、すでにその最先端にいる。
　とくに農薬分野では、農家に設置したカメラで作物の画像を送り農薬散布法などを指導するサービスを世界的な化学メーカーが始め、好評を集めている。「自社視点の『ものを売る』から『顧客の目的を叶える』に回帰することで製品の魅力は大きく高まる」。
　ＢｔｏＢでも新しい動きがある。飛行機エンジンではメーカーがセンサーで監視し、予備保全や飛行業務最適化を提案する取り組みが始まっている。「素材や部材・部品側が主体となり川下に関わることが求められている」。日本の素材メーカーがその役割を担うことへの「期待は大きい」。
　ただ、ＩｏＴを会社全体の事業戦略に組み込むのは大きな決断がいる。「ＩｏＴの普及はこれから。倉庫一つからのカイゼンなど、小さな所からコツコツやるのも大切」。アクセンチュアの強みは現場から経営戦略までの対応力で「現場で実績を上げ、それを部門全体、全社規模での導入、実績化につなげていく」ことも大事な役割と認識する。
　ＩｏＴは突然始まった取り組みではなく、２００８年前後の「ユビキタス」ブームの時にも「実はセンサー・ネットワーク構想がかなり進んでいた」。しかし「情報を処理、活用する仕組みが不十分だった」。現在はクラウドなどの発達で地盤が整ったことに加えて、企業側の「新興国、新分野の躍進による危機感」がＩｏＴ導入の原動力になっている。
　長部氏は産業のＩｏＴ（ＩＩｏＴ）をはじめ、ウエアラブルなどの機器活用、マーケティングまで、多彩な領域でのデジタル活用に奔走している。その中で感じる流れが「脱スマートフォン」。「今はスマートフォンに集中しているが、ＩｏＴではすべてがデジタル化していく。その一つがウエアラブル機器で、人とネットワークの媒介となる」。現在はＩｏＴ元年といわれるように過渡期の最中。近い将来には「ものづくりとマーケティング、モノと人のインターネットが融合する。それは現実の動きをよく理解することでもあり、より良い世界へとつながっていく」と展望する。"

2015年 2月17日
化学工業日報

アクセンチュア
世界最大の経営コンサルティングファーム。様々な分野・産業に対し戦略、業務、ITなどのあらゆるコンサルティングを提供しシステムの設計、開発、運用等を手がけるITサービス企業でもある。フォーチュン・グローバル500に選ばれている多国籍企業（2009年の順位は348位）。アンダーセンの一部であった同社は、会計系コンサルティング会社という印象が強いが、システムを中心に戦略から人/組織・業務プロセス改革、SE・運用コンサルまで幅広く展開している。

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