IT・コンサル大手が「美術館」で採用イベント-- アクセンチュアの狙いは？

経営コンサルティングと IT サービスの大手である Accenture（アクセンチュア）が、東京・六本木の「国立新美術館」で学生向けの採用関連イベントを実施した。アートと IT・コンサル。一見つながりの薄い分野に見えるが、実は同社がクリエイティブ系人材を獲得する狙いと合致している。

IT・コンサル大手が「美術館」で採用イベント-- アクセンチュアの狙いは？

アクセンチュアといえば、製造業をはじめとする各種産業界向けのコンサルティングと、情報システムの設計、開発などで知られる。

しかし新たに始めた一連の採用関連イベント「Accenture Career Link Events」の会場は、本業と直接のかかわりを想像しにくい場所が多い。国立新美術館を皮切りに、3月21日には京都・嵐山の博物館「小倉百人一首殿堂」、4月1日には東京・渋谷の「国立代々木体育館」、4月25日には東京・六本木で開催する「六本木アートナイト」を予定している。

イベントに先立って国立新美術館で行った記者発表会では、同社の程近智社長らが登壇。意図を説明した。

いわくコンサルティングをはじめアクセンチュアの身を置く業界は激変期にある。顧客は初期段階から従来の提案書などにとどまらない形でさまざまなサービスを求めており、迅速な成果も欲している。これに伴い、コンサルタントだけでなくクリエイティブ系の人材も企画、提案に近い段階から参加する機会が出てきている。

アクセンチュアはすでに人材需要の変化に対応し、英国のデザイン会社 Fjord を買収するなどしてクリエイティブ分野を強化。日本でも同様の動きを進めたい考え。

国立新美術館などでイベントを開くのもより幅広い人材を取り込む方針の一環だ。初回のパネリストとしては、広告制作などを手掛けるライゾマティクス代表取締役であるクリエイティブディレクターの齋藤精一氏らを招いた。

齋藤氏は発表会の中で、今後求められる人材として「国語と算数が両方できる」とのたとえを披露。提案を表現、説明し、形として描き出す能力を国語、マーケティングの能力を算数と、小中学校の教科になぞらえた。

各登壇者の説明が終わると、アクセンチュアはその内容を、リアルタイムに手描きの図としてまとめる「グラフィックレコード」として分かりやすく掲示。クリエイティブ系人材の有用性を簡単に演出してみせた。

なお、Accenture Career Link Events の各イベントは、同社人事部による通常の採用活動とは別に手掛けていくという。参加した学生にアクセンチュアの事業分野に興味を持ってもらうだけでなく、別企業に入社した場合でも将来のビジネスパートナーになってもらえるよう縁を作っておきたいとしている。

果たしてこのイベントがどのような形で実を結ぶのかは注目されるところだ。

2015年 3月3日
INTERNETCOM

アクセンチュア
世界最大の経営コンサルティングファーム。様々な分野・産業に対し戦略、業務、ITなどのあらゆるコンサルティングを提供しシステムの設計、開発、運用等を手がけるITサービス企業でもある。フォーチュン・グローバル500に選ばれている多国籍企業（2009年の順位は348位）。アンダーセンの一部であった同社は、会計系コンサルティング会社という印象が強いが、システムを中心に戦略から人/組織・業務プロセス改革、SE・運用コンサルまで幅広く展開している。

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