金融の枠を超えて社会的価値を創造する─SMBCグループの「インパクト可視化」への挑戦EYストラテジー・アンド・コンサルティング　プロジェクト事例

EYストラテジー・アンド・コンサルティング　Webサイト引用
https://www.ey.com/ja_jp/insights/financial-services/smbc-groups-efforts-to-visualize-impact-to-create-social-value

経営の中心に据えられた「社会的価値の創造」
SMBCグループは、2023年度から始動した中期経営計画「Plan for Fulfilled Growth」において、基本方針のひとつに「社会的価値の創造」を掲げている。この戦略は、単なるCSR活動やパーパス設定にとどまらず、本業を通じた社会課題の解決と企業価値向上の両立を目指すものだ。

たとえば、SMBC女子バスケットボール部の立ち上げでは、選手が競技を引退した後も社員として活躍できる仕組みを整備。これにより女性アスリートのキャリア形成支援という社会課題の解決にも貢献している。こうした取り組みは、企業の成長と社会的意義が両立する「幸せな成長」への一歩として注目を集めている。

また、SMBCグループはパーパスを掲げる代わりに、経営方針の中核に「社会的価値の創造」を据えている。理念にとどまらず、本業でいかにその価値を生み出すかにフォーカスし、金融機関としての役割を再定義しようとしている点が特徴的だ。

EYと連携して進める「インパクトの可視化」
こうした取り組みを本質的な価値創造に結びつける鍵として、SMBCグループは**「インパクトの可視化」**という先進的な取り組みに乗り出している。社会的価値とは何か、どのような形で社会に影響を与えているのか──その効果を明確にし、社内外に共有可能な指標へと落とし込むことが目的だ。

このプロセスを支援しているのが、EY新日本有限責任監査法人である。インパクト加重会計（IWA）の専門性を活かし、SMBCグループの施策が社会にどのようなアウトカムや影響を及ぼしているかを、ロジックモデルや波及経路といった手法を用いて定量化・構造化している。

例えば、高齢者向けサービス「エルダープログラム」では、サービス利用が健康寿命に与える影響、その影響が家族などの周辺ステークホルダーにもたらす変化を“インパクト”と捉え、可視化に取り組んでいる。

このように、社会的価値の創出を“見える化”することは、社内の意識醸成にも大きな意味を持つ。自らの業務がどのような価値に結びつくのかを社員が理解することで、組織全体のモチベーション向上と価値創造への参加意識が高まるからだ。

社会的価値のリーダーを目指して
インパクト可視化の取り組みはまだ始まったばかりだが、SMBCグループは着実に前進している。2023年10月には「社会的価値創造推進部」を設置し、現在では本部体制へと発展。社内浸透と社外への発信を両輪で進めている。

今後は、5つのマテリアリティと10のゴールに対して、アウトカム・インパクトベースのKPI設定を本格化させるフェーズに入っている。EYの支援を受けながら、戦略と実行の一体化を図っている最中だ。

また、将来を見据えた「フューチャーデザイン」の導入にも着手しており、社会課題ごとにあるべき未来像を描き、柔軟な発想で課題解決に挑む姿勢を持ち続けている。

金融機関がインパクトの起点となる時代へ
SMBCグループがインパクトリーダーを目指す背景には、「金融機関が産業のハブである」という自覚がある。社会的価値に関する知見が深まる中で、一般事業会社だけでなく、金融機関もまた価値創造の中心に立つべきだという考えに基づいている。

その挑戦を支えるEYとの連携は、単なるコンサルティングを超えた共創の関係となっている。SMBCグループのビジョンや課題を深く理解した上で、外部の視点から冷静かつ建設的なフィードバックを行い、戦略遂行を支援している。

社会的価値という“目に見えないもの”を、組織の中で実感し、外部にも共有可能な形に落とし込む──その難しさと重要性を理解しながら、SMBCグループは次世代の金融モデル構築に向けて歩みを進めている。