持続可能な都市交通の実現へ：東京メトロのサステナビリティ経営KPMGコンサルティング　プロジェクト事例

KPMGコンサルティング　Webサイト引用
https://kpmg.com/jp/ja/home/insights/2024/07/case-tokyo-metro01.html

都市交通の中核企業が挑む、脱炭素と人的資本の両立
東京地下鉄株式会社（以下、東京メトロ）は、9路線の地下鉄を中心に首都圏における都市交通の中核を担う存在として、人々の暮らしと経済活動を支えてきた。2022年、同社は「安心で、持続可能な社会」の実現を本業を通じて目指すべく、本格的なサステナビリティ経営の推進に乗り出し、そのパートナーとしてKPMGコンサルティングが選ばれた。

脱炭素経営の最前線に立つ鉄道インフラ
もともと鉄道は、他の交通手段に比べて温室効果ガス（GHG）の排出量が少なく、環境負荷の小さい移動手段とされている。東京メトロでは、50年以上前から省エネ車両の導入などに取り組んできたが、サステナビリティ経営の柱として、さらに踏み込んだ脱炭素経営の高度化を進めている。
その具体的な取り組みとして、GHG排出量のスコープ3（他社の排出も含む）までを含めた算定を実施し、2024年度からはインターナルカーボンプライシング（ICP）も導入予定である。また、長期目標として「メトロCO2ゼロ チャレンジ 2050」も掲げ、再生可能エネルギーの導入にも注力している。
KPMGの支援のもとで取り組まれているのは、単なる削減だけでなく、自社の社会的インパクトを定量的に把握・開示する仕組みの整備だ。

社会に貢献する「もし東京メトロがなかったら」の価値試算
東京メトロでは、“もし自社が存在しなかったら”という視点から社会的価値を見える化するアプローチを導入。たとえば、鉄道運行によるGHG削減効果の算定では、同社の年間貢献量は約177万トン、これは東京都の排出量全体の**約3％**に相当することが明らかになった。
この取り組みによって、ステークホルダーに対して東京メトロの社会的役割を明確に伝え、環境面でのリーディングカンパニーとしての自覚と責任をもって、脱炭素経営を推進している。

人的資本経営：現場起点の「メトロらしい人財戦略」
もう一つの柱となるのが人的資本経営である。変化する社会・顧客ニーズに対応し続けるためには、現場で働く社員一人ひとりの自律性や協働力が不可欠だ。そこで同社は、社員の声を反映した人財戦略の策定を開始。KPMGコンサルティングは、経営層へのインタビューや若手社員とのワークショップを実施し、「東京メトロが求める人財像」を可視化した。
導き出されたのは、「自律・挑戦・協働」という3つのマインド。このマインドを実現するための育成方針や社内制度の設計が行われ、サステナビリティレポートでも明確に示されている。
現場取材や社員ヒアリングを重ねたうえでの戦略構築は、“他社の真似ではなく、東京メトロらしいあり方”の発掘と具現化を可能にした。

社会課題に応える経営変革のパートナーシップ
KPMGコンサルティングは、本プロジェクトを通じて、定量的な社会的価値の把握、脱炭素戦略の立案・実行、人財戦略の設計など、多面的な支援を行っている。東京メトロ側も、こうした外部パートナーとの協働を通じて、企業文化や経営方針に根ざした“リアルな変革”を進めてきた。
サステナビリティ経営は、数字や制度の整備だけでなく、企業としての信念や社会への姿勢も問われるものである。東京メトロは、公共交通インフラの担い手として、責任あるサステナブル経営の実践者としての一歩を着実に踏み出している。