movin:

ありがとうございました。ちなみにSITは、かなり昔から存在していたプラクティスだと思いますが、以前から変わらずサービスを提供しているのか、それとも最近になって顕著に力を入れ始めているのか、そのあたりはいかがでしょうか？

安茂様：

最近になってというわけではなく、かなり昔から同じような形でやってきています。私は入社して2年半経ちますが、SITのシニアメンバーには15年選手もいます。彼ともよく話すのですが、A.T. カーニーのSITは、先ほどお話ししたようなポジショニングで昔から変わらずやってきています。

movin:

なるほど。ちなみに先ほど、ITコストを40%程度下げたというお話がありましたが、このような劇的な成果を出すには、しっかりとした構想策定ができるということが非常に重要なポイントになると思います。なぜSITにはそれができるのか、その理由を知りたいのですが、いかがでしょうか？

安茂様：

その理由は、我々の求める人材要件に関係あるのですが、まず、SITのメンバーは決してITの専門家というわけではありません。ITが分かる以前に、経営コンサルタントとして一人前であるということが大前提になります。ですので、ITしかできないコンサルタントではなく、当然、マネジメントアジェンダであるマーケティング、組織改革、プロセスオペレーションなどの領域においても、きちんと洞察し、自ら考え、問題解決を図ることができる、そういったコンサルタントであることが大前提なのです。そして、それに加えてITがウィークポイントでないということが必要です。決してITの専門的なことまで全て知っている必要はなく、ITに関して大よその土地勘があって、大事なことと、そうでないことを仕分けられる、といったことができれば十分だと考えています。

movin:

そうしますと、選考の際にはITのバックグラウンドはある程度必要になってくるかと思うのですが、それに加えて、経営コンサルタントとしてのポテンシャルを見ることになるのでしょうか？

安茂様：

どちらかというと逆で、まずは経営コンサルタントとしてのポテンシャルを見ます。それがあれば、ITのバックグラウンドがあるなしに関わらず、A.T. カーニーの仲間になると思いますので。そして、SITかどうかは、ご本人の意向次第となります。

movin:

なるほど。

安茂様：

この領域を自分の強みにしていきたいと思っている方はもちろん、この領域が今の自分の強みなので経営コンサルタントになる1つの入り口としてSITを選択する、という形でも全く問題ないと思います。コンサルティング未経験の方は、インダストリーの知見もファンクションのケイパビリティも全くない中で、ゼロからスタートするのは大変だと思います。そういう意味では、IT業界の人にとっては経営コンサルタントの登竜門として入る場所と考えてもらえれば良いと思います。ですので、ITに詳しい必要はないですし、あくまでも経営コンサルタントとしてのポテンシャルを求めています。

movin:

なるほど。よく分かりました。
ちなみに、A.T. カーニーの中において、SITのメンバーだという明確な背番号のようなものはあるのでしょうか？

安茂様：

はい、あります。A.T. カーニーでは、何かしらのプラクティスに属するのはマネージャー以上なのですが、アソシエイト、シニアビジネスアナリストもプラクティスに所属するケースもあります。実際に数名のシニアビジネスアナリスト、アソシエイトがSITに所属しています。

movin:

なるほど。では、SITにおけるアサイメントに関してはどのように行われるのでしょうか？針ヶ谷様からA.T. カーニーにおけるアサイメントの仕方についてお伺いしたのですが、基本的にはそれと同じような形で、あくまでも各コンサルタントの方が希望を出して、そのうえで決めるというような形になるのでしょうか？

安茂様：

はい、おっしゃる通り、同じ形になります。基本的にSITのメンバーは、タイミング良くSITのプロジェクトがあれば、こちらからオファーを出しますし、本人も希望するので、結果的に優先的にアサインされることになります。逆に、他の案件もやってみたいということであれば、SIT以外のプロジェクトにアサインされます。

movin:

ではもしSIT以外の方が、SITのプロジェクトに希望を出した場合はどのようになるのでしょうか？

安茂様：

はい、もちろんウェルカムです。SITのメンバーが他の案件に携わることも、SIT以外のメンバーがSITの案件に携わることも、共に実際に起きています。現状はSITに人が足りていないので、後者のケースの方が多いと思います。あと、人選の仕方については、特にこれといったルールはないのですが、プロジェクトのテーマや求められるケイパビリティから判断して、やはりインダストリーのスキルをもっと入れた方が良いテーマなのか、あるいは、そこまで必要なくて、SITを中心に組んでできるのかどうかなど、テーマとケイパビリティから考えるケースが多いです。あとは、当然ですが、コンサルタントのアベイラビリティですね。

movin:

なるほど。そうしますと、やはりITに関する知見が必要なプロジェクトであれば、SITのメンバーが優先してアサインされることが多いのですね。

安茂様：

そうですね、実際には、インダストリープラクティスのコンサルタントの中には、ITアジェンダを取り扱いかねるというメンバーはいます。マーケティング、財務、組織などは何でもこなせる自信はあるけど、ITだけはちょっと自信が無く、いい加減なことを言ってクライアントに迷惑をかけてしまっては困るので…というような方です。A.T. カーニー内にもいますし、世の中にもいっぱいいると思います。なのでITに関するプロジェクトにおいては、我々に協力を求めてくるケースは多いですし、提案やリードの段階から、そのような方々と一緒に動くようなことも多々あります。

movin:

ちなみに近年の経営課題において、ITのテーマが絡んでくるケースは非常に多いと思うのですが、そのような状況ですと、SITは色々なところから引っ張りだこになっていますよね？

安茂様：

そうですね、とにかく人は足りていないですね。若手も足りていないですが、マネージャー以上のメンバーも足りていません。具体的には、先ほどお話ししたような、とりあえず相談にのって欲しいというリードの段階から、クライアントと会話し、課題を特定して、必要であればプロジェクトをデザインして、提案できるという方です。そういった方に手伝って欲しいという社内からの要望も非常に多くなっていますので。

movin:

それは大変ですね（笑）。

安茂様：

もちろん、今の若手が力を付けて、マネージャーに上がってくれれば良いのですが、本当に喫緊の問題なので、先ほどのような方がいらっしゃれば、すぐにでもジョインして頂きたいと考えています。

movin:

なるほど。

安茂様：

あと、マネージャー以上でSITにジョインされる方は、その領域でキャリアを築いていくことになると思うのですが、ジュニアの方がSITにジョインする場合は、必ずしもSITにおいてマネージャーやプリンシパルになって欲しいという訳ではありません。本人の志向として、最終的に金融に行きたければそれでも良いし、コンシューマーに行きたければそれでも構わないと思っています。特に金融とITは親和性が高く、案件も多いので活躍できる場は大いにあると思います。SITのキャリアは木の幹のようなもので、SITにおける経験を通じて、ITがウィークポイントでない経営コンサルタントとして力を付ければ、別のインダストリープラクティスでも通用する力を身に付けることができると思います。ですので、ご本人が別のプラクティスに行きたければ、それはそれで構わないと考えています。SITを経由して他のプラクティスに移る方がいたとしても、それはA.T. カーニーが組織として強くなるということを意味していますので。

movin:

なるほど。SITに拘束する訳ではないということですね？

安茂様：

はい、拘束はしないですね。そもそも組織的なメカニズムとしてSITが何かを拘束するということはありません。先ほど申し上げました通り、他のプラクティスの案件をやってはいけない訳ではないですし、SITのマネージャーにならなければいけない訳でもありませんので。我々は価値観を共有できるが故に組織として集まっており、情報・ナレッジの共有、業界研究、執筆活動、等を行っています。