movin:
非常に自由度の高い印象を受けました。でもそうすると、経験の少ないコンサルタントはどうやってキャリア形成するのでしょうか?普通のコンサルティング会社であれば、○○を専門とするコンサルタントはそれを勉強し、そのテーマのコンサルティングを実施してキャリアアップすると思うのですが。
羽物様:
まず当社の場合、コンサルタントとして出来上がった人を採用して、いわば「売上を買う」ようなことはしていません。コンサルタントとしての経験を持っていても、スカイライトに入社後、チャレンジして伸びていける人材を採用していますし、何よりコンサルタントとしては未経験な人材採用が多いです。ポテンシャル採用です。
育成の観点としては、大きく2つあります。1つは、コンサルタントとしてのベースとなるプロフェッショナルな部分です。私はこのベースとなる部分を4段階でとらえています。
まず、自分の与えられた仕事をやり遂げるという段階。タスクワーカーと呼んでいます。未経験のコンサルタントにはまず、自分の仕事をちゃんとこなすことが求められます。情報収集・整理・可視化して、課題の解決策を導く。上司や同僚、お客様など他の人と会議やインフォーマルなシーンで、口頭や文書などでコミュニケーションする。そういう基本的なことができないといけません。
誰でもできそうなことですが、案外できないものです。ヒアリング内容をちゃんと理解することも入社早々は難しいです。収集するコツもわからなければ、情報を体系的に整理することも最初は難しいです。考えてみれば、こういうことは学校教育の中でちゃんと教えられておらず、当然、訓練もされていないので、最初はできなくてもしょうがないと思っています。
次の段階は、プロジェクトスタイルワーカーです。チームの一員として、自分のタスクをきちんとこなした上で、他のメンバーと協働できる段階です。
プロジェクトに限らず、チームで仕事をする場合、担当が割り当てられます。理屈では各自が担当領域をきちんとこなせば全体がうまくいくはずなのですが、そうはなりません。担当間に手つかずのことが放置されたり、他の部分を理解していないがために自分の担当領域のアウトプットがずれていたりということが起こります。それを防ぐためには、自身の担当領域の「作業をこなせばよい」というレベルから変わる必要があります。担当領域の位置づけを正しく理解せねばならず、そのためには、他の領域がどういう考えで進められているかを知り、自分と齟齬が無いか、間に漏れが無いかを意識しなければなりません。
第三段階はコラボレイティブマネジャーです。チームを統括してプロジェクトの指揮を執ります。マネジャーなので管理する側面もありますが、大切なのは、チーム内外、上下左右に目を配り、各メンバーやチームが正しくコラボレーションするようにすることです。スカイライトのマネジャーになると、自身でやらなければならないタスクをこなす以上に、上下左右の人たちに動いてもらって、しかも正しくコラボレーションしてもらうことが重要なミッションになります。
第四段階はビジョナリーリーダーです。お客様も含め、方向性を提示し、対話を通じて共感を得て、新たな価値をもたらすことのできるリーダーです。先も申し上げたように、スカイライトのスタイルだと、「これが答えだ」と提示するのではありませんから、「こうなると良いですよね」と仮説を提示して、対話しながらビジョン形成するようなイメージです。
movin:
未経験の段階から成長していくイメージですね。これと御社のクラスとが連動しているのですか?
羽物様:
はい、そうですね。ただ、4つの段階は、急にある日、クラス昇進したからガラッと変わるわけじゃなくて、状況によってミックスされます。アナリストは基本的に自分のタスクをまずちゃんとやって欲しくて、その意味ではタスクワーカーですが、だからと言って担当領域以外に無関心では良い仕事はできません。なので、プロジェクトスタイルワーカーの要素は求められます。
マネジャーになるまで、コラボレイティブマネジャーの段階は無縁かというと、それも違って、あるチームを任される場合もありますから、コラボレイティブマネジャーの要素も必要になります。マネジャーだからタスクを担わないかというと、自身のタスクも担います。
この4つの段階で気を付けたいのは、各段階で非連続であるということです。タスクワーカーは「自分が仕事をする」ということにベクトルが向いています。プロジェクトスタイルワーカーは「自分の仕事と他人の仕事と」両方にベクトルが向きます。コラボレイティブマネジャーは「上下左右の他人に仕事」してもらう。ビジョナリーリーダーは新しいビジョンを提示して共感してもらう。意識レベルで非連続な変化をしないと、上のレベルの仕事はできないのです。それに気づかないでいると、いつまで経っても「視点が低い」と評価されてしまいます。
movin:
なるほど。いつまでも下の意識で仕事するなということですね。そのような働きかけは御社の中でされているのですか?
羽物様:
スカイライトでは、評価制度の基本となる人材モデルの中で、4段階のレベルをもう少し詳細に定義しています。そして、半年に1度行われる評価のタイミングで人材モデルに照らしてどういう段階にあるか意識できますし、そのフィードバックの過程で、自分は何ができていて次の段階に行くには何が必要か、話されます。
でも、入社して最初に受けるのは研修ですね。未経験であってもコンサルタントとしてのタスクをこなすことができるように、みっちり研修します。研修は現場のコンサルタントとして活躍している人間が担当しますから、実際のコンサルティング業務に近いレベルが要求されます。また、コンサルタントとしての心得も説かれますので、意識面での働きかけも行われます。
その後も定期的に研修もありますし、コンサルティング現場で日々、直接上司と仕事することや評価でのフィードバックを通じて、働きかけはされ続けます。
movin:
入社後のみならず、日常からコンサルタントとしてのベースが作られていくことが、理解できました。
羽物様:
もう一つの育成の観点は専門性についてです。コンサルタントのベースができたとして、何で勝負するのか?スカイライトは、会社としてフォーカスしているコンサルティング領域があるわけではありません。また、コンサルティングプロジェクトは立候補制です。どんなプロジェクトで人材ニーズがあるのか、社内で募集されます。それに希望するコンサルタントは手を挙げる。もし複数いたらプロジェクトマネジャーが選択する。そんな自由市場のような仕組みです。
movin:
自由なのは良いことのようですが、自由すぎることで専門性が磨かれないこともあるのではないですか?
羽物様:
そうですね。漫然と仕事を請けていると、そうもなりかねないのは事実です。私はことあるごとに、T型モデルを持ち出しています。
movin:
T型モデルとはなんですか?
羽物様:
コンサルタントの持つ知見の領域で、幅広くカバーしつつ、自分の得意な部分を深掘りすると、Tの字のように見えます。これがT型モデルです。
Tの横棒は、太く広くあるべきです。スカイライトに依頼される経営課題は多岐に亘ります。一つのお客様企業だけ見ても、課題は多種多様です。それを相談されるには、ある程度広く深い知見が必要です。ディープジェネラリストと呼んでいます。
専門性の問題はTの縦棒をどうするかということになりますが、それは自分で見つけなさいと言っています。人により興味を持つ領域は異なりますし、向き不向きもあります。だからそれは自分で見つけて深掘りするべきと言っています。プロジェクトに立候補する際に、自分のやりたい方向にマッチするプロジェクトに立候補することで、より近い領域で仕事をすることができます。また、深掘りしたいテーマの社内ゼミに参加することも可能ですし、既存のゼミが無ければ、自分で立ち上げることもできます。もっと深掘りして、R&Dとして、社内アクティビティにすることも可能です。
movin:
そこまで自由なのですね。それが社内で推奨されているのでしょうか?
羽物様:
そうです。あるコンサルタントが今、担当しているプロジェクトと全く違うテーマのゼミやR&Dに参加することも可能ですし、将来そっちをやりたいのなら、ぜひそうすべきと言っています。
movin:
スカイライトの人材育成について、理解できたと思います。ではまた話題を変えまして、今後の事業展開について教えてください。御社はコンサルティング会社でありながら、起業家を支援するプログラムである「起業チャレンジ」も運営されているようですが、どういう考えからそのような取り組みをされているのでしょうか?
羽物様:
順にお話ししましょう。まず、当社の主力事業は今後もコンサルティング事業です。主に日系企業をお客様として、現時点で多くのプロジェクトは日本で行われています。この日本でのコンサルティング事業はまだ伸ばしたいと考えています。スカイライトコンサルティングという会社自体、日本でもまだあまり知られていない存在です。一方で、我々の行っているコンサルティングを通じて、企業がより果実を得られるだろうと思っています。つまり、顕在化していない部分も含めニーズはまだまだあり、よって日本でのコンサルティング事業はまだ伸ばせると思っています。
そのためには、もっとスカイライトのことを知ってもらわなければなりませんし、コンサルタントも増やし、成長してもらわなければなりません。我々のコンサルティングはお客様ごとに課題解決が異なるカスタムメイド型ですから、何よりそれを担務する「人」が鍵となります。成長のための環境整備ももっと必要だと思っています。既存のコンサルティング事業をちゃんと伸ばすというのが第一の方針です。
第二の方針は、ご指摘の「起業チャレンジ」もそうなのですが、コンサルティングという事業を拡げるということです。コンサルティング事業というと、狭義の意味では、お客様企業の改善をして、コンサルティングの働きに対してフィーをお支払いいただくビジネスモデルということになります。この意味を拡張して考えると、何か良くなることをして、結果として対価が入ってくるというのも広義のコンサルティングなのではないかと考えています。
起業チャレンジは2008年ごろから開始した、若い起業家を発掘して実際に起業してもらうプログラムです。応募してもらって、コンサルタントがついてブラッシュアップして、コンテスト形式で選考して、良いチームには起業資金を実際に提供し、会社設立を経て事業を行ってもらう。スカイライトは起業資金の15%のシェアをもらっていますので、そうしたチームが成長してくれれば、いずれ金銭的にも何らかのプラスが返ってくるかもしれないスキームになっています。これは何か世の中的に良くなることをして、結果として対価が入ってくることが期待できると言えます。まあ、必ず対価が入るわけではないですし、それどころか、失われる可能性の方が高いので、高リスクではありますね。
他には、サービス提供型のモデルもあります。お客様が共通で悩んでいることがあれば、コンサルティングの形でイチから課題を洗って、カスタムの解を見つけて、という必要性は低いです。共通の課題を解決するサービスを提供する方が、安価でスピーディな解決になります。売上自体は少額ですが、すでにそういうサービスもスカイライトは提供しています。
movin:
東京ヴェルディと資本業務提携したのも、この第二の方針によるものなのでしょうか?
羽物様:
広義のコンサルティングという意味ではそうですね。ヴェルディさんに出資をし、スポンサー(パートナー)企業にもなり、人も専従させ、結果として良くなったら、我々もリターンを得ることを期待しています。
私はサッカー好きなので、ヴェルディさんの話となると、いくらでも続いてしまいますので、ぐっとこらえて(笑)、第三の方針の話をします。
第三の方針は平たく言うと、グローバルです。現状では、スカイライトのコンサルティングのお客様は日系企業が多く、プロジェクトは日本で実施されています。ですが、近年急速に変化しています。製造業では海外でものづくりをするのが、しばらく前から当たり前になっています。さらに進んで、海外で原材料を調達して、海外でものを作って、海外で売る。製造生産系のプロジェクトはもちろんのこと、経営管理のプロジェクトでも、海外の比重が高くなっています。
そういうプロジェクトでは、主な検討は日本で進めることがまだ多いのですが、出張やテレビ会議などで、海外拠点の方とディスカッションをします。そうすると、ドキュメントは英語、ディスカッションにも英語が必要になっています。また、日本で検討を進めたプランにもとづき海外展開する際に、海外拠点をサポートできる体制も、当社に求められるようになってきています。
日系企業の中には、外国人採用を進め、社内公用語を英語にするところも出てきています。外資系企業の日本拠点の仕事も、当社は取り組んでいます。お客様企業の経済活動がよりグローバルに広がっていますので、当社としてもより良いサービスを提供するために、グローバルへの展開を意識せざるを得ません。
movin:
具体的に、どのような取り組みを進められているのでしょうか?
羽物様:
英語がネイティブレベルで日本語がネイティブでない社員の採用や、社内文書や社内システムの英語対応を数年前から進めています。仕事の受注という面で行くと、現在は日系企業の海外の仕事がメインですから、出張ベースでの対応になっています。ですが、これも数年以内に、スカイライト自らが海外に拠点を持っていないと、良いサービスレベルが維持できなくなると思っています。
movin:
海外進出ですね。国や地域は検討されているのでしょうか?
羽物様:
日系企業の進出先となると、今はインドやASEAN地域だと考えています。工場の設立もありますが、人口増や経済発展により市場としても伸びていますから、有力な地域です。
movin:
なるほど。良くわかりました。日本でのコンサルティング事業を核に、垂直・水平に拡げていこうというお考えなのですね。そうなると羽物代表は、ますますお忙しくなられますね。
羽物様:
まあそれはそうなのですけど、自分ひとりの力ではできませんし、そもそも新しくチャレンジするのも、全部自分の発案で進めるわけではないのです。アイデアを出すのもスカイライトは誰でもフラットな関係でして。
先ほど東京ヴェルディの話が少し出ましたが、あれはサッカー好きの私が検討をスタートさせたわけではないのです。企画のスタートは、新卒入社3年目のコンサルタントが私にメールしてきたことに始まります。「羽物さん、東京ヴェルディと何かできそうですよ」と。
彼はもともとサッカーをしていて、スカイライトに入社するときから、将来はサッカーやスポーツに関わるコンサルティングをしたいと言っていました。入社後しばらくは、普通に製造業や小売業のコンサルティングをしつつ、チャンスを模索していました。
彼が私にメールをくれたのが、2014年の2月。それから何ができるか検討し、先方ともディスカッションを進めて、提携の話をまとめて合意したのが2015年の1月。検討期間中の彼は、他の企業のコンサルティングの仕事をしながら、隙間の時間で提携の企画を詰めていました。大変だったと思いますが、やりたい情熱があったからやれたのでしょう。最終的に年明けに当社の取締役会でGoが出て、彼は2015年2月から、東京ヴェルディさんの普及育成事業の改革改善に従事しています。
movin:
そうなのですね。上からの指示で検討したのではないのですね。
羽物様:
はい。アイデアを思いついて起案することに、上も下も関係ないです。面白いからやろうとなるかどうかは職位には関係なく、アイデア自体の魅力です。ヴェルディ以外にも若いコンサルタントの発案でスタートした取り組みがいくつもあります。
若いうちの方が頭も柔軟で行動力もありますから、まだ経験が少ないからと躊躇することなくチャレンジして欲しいと思っています。お客様向けのコンサルティングをすることと、全く新しいアイデアに思いを巡らすことは違う頭の使い方だと思うのですが、それをすることは絶対に本人の成長につながりますし、取り組んだ新しいことがうまく行けば、結果として経済的にも満たされます。私は、そういうことを後押しするのも役目だと思っています。
movin:
本日は長時間、ありがとうございました。御社が自由でフラットなカルチャーで、さらに発展されるイメージが持てました。今後ともよろしくお願いいたします。
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